荒廃した関東の地で激突するジャックとスラムキング、
そして逞馬と天馬の両雄が邂逅することとなった
衣谷遊氏による『バイオレンスジャック20XX』の第2巻。
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というわけで半年ぶりの単行本となった本巻の前半の見所は
何と言ってもついに登場したジャックの大暴れ。
関東の地に突如現れたジャックとの戦いで仮面を割られるキング、
そして拓馬たちの砦を襲う外道会との抗争、というシチュエーションは
原作の「関東スラム街編」と同じなんですが
本作『20XX』の大きな変更点である「キャラの年齢の底上げ」と
「ジュンコや黒部、田島などのサブキャラを重視したストーリー」の2点によって
全体の印象はかなり異なったものになっている印象。

特にジュンコが囚われの身となりつつも自分の意思と実力でヤクザたちに抵抗する展開は
ある意味ジャックらしい露骨なエロ要素も相まって
彼女がこの物語のヒロインだということをしっかり示してくれた感じですね。
彼女の失声症、心の傷は終盤まで引っ張るのかと思いきや
意外にも早くあっさりと解消されてしまったのはちょっと拍子抜けだったり。
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またジャックがキングの仮面を割ったことに対し
原作の逞馬は「キングを怒らせてしまったのに恐怖を抱いていた」んですが
『20XX』では「キングも無敵じゃない」と前向きに、
積極的に打倒スラムキングを意識しているのも大きな違い。
このあたりの考え方は原作だと成長した中盤以降の逞馬に近いものなので
キャラの年齢が引き上げられた『20XX』ならではといった感じですね。

そして後半の見所はついに登場した天馬と逞馬がお互いの思想をぶつけ合う展開。
いやーこのあたりも大胆に原作から変えてきたというか
描写するキャラを絞ったことで思いっきり物語が整理された感じがしますね。
単純に比べるだけでも天馬がテンマグループを率いて外道会と戦う「天馬編」は32巻、
そして逞馬と天馬が対面する「逆襲ハニー編」は最終盤の43巻ですからね。
全45巻の電子書籍版での巻数になります。)

本巻での逞馬と天馬はお互いを認めつつも協力する関係にはまだ遠いですし
「逞馬と天馬は雌雄を決する運命にある」
「逞馬、天馬、スラムキングで関東が天下三分になる」という
原作では匂わせつつも実現しなかった戦国乱世的なシチュエーションを
数十年の時を超えて実現させてくれるのかも、という期待もあります。

それと天馬の人生に大きな影響を与えた年上の女性、けい子先生(立花恵子)は
個人的にはジャック最萌トーナメント第1位というか
永井豪キャラでも指折りの「綺麗な女性」だと思っているんですが
衣谷先生も彼女には思い入れがあるのか「天馬編」での彼女のエピソードが
セリフ回しも含めてほぼ完全再現されていたのが嬉しかったですね。
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非常に美しく描かれていて衣谷先生の気合も感じます。

というわけで原作よりもサクサク進んでいるというか
描写するキャラやエピソードを逞馬と天馬の周辺に絞ったことで
物語が一気に整理された感のある『バイオレンスジャック20XX』。

ただそれぞれのキャラが既に自分たちの意思で戦っていることもあって
「ジャックにより周りの人間たちが否応なしに戦いと暴力の渦に巻き込まれてゆく」
という要素がかなり薄くなってしまっているのが気になるところ。
天馬が見せた「ジャックへの憧れ、ジャックが乗り移ったような戦いぶり」も
彼の少年期のエピソード「地獄の風編」がガッツリ削られてしまったので
『20XX』では分かりにくくなってしまっていますし
ジャックの出番が少ないどころかその存在意義すら怪しくなってしまっているのは
タイトルに「バイオレンスジャック」を掲げる作品としては果たしてどうなのかなあ、
とも思ってしまったり。

とは言え「野獣王編」からの引用と思われるシンゴ&ボンバが意外な形で登場したり
本巻ラストでは「海堂」の名前も出てくるなど
ワクワクする要素、気になる要素はたくさんありますし
その中でジャックの出番や影響力が少しずつ増えていったら嬉しいなあ、と。

 

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  アニメ・漫画, ダイナミック系

ロングセラーとなった原作漫画から始まり
ドラマCD、TVドラマと今も世界観を広げている『孤独のグルメ』が
『小説 孤独のグルメ 望郷篇』と銘打ち全18エピソードの小説版として復活。
火の鳥かな? 男はつらいのかな?
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本書の筆を執った壹岐真也氏は初めて聞く名前だったんですが
小説家ではなく『孤独のグルメ』がかつて連載された「月刊PANJA」や「週刊SPA!」などに
携わっていた編集者の方みたいですね。
「月刊PANJA」での『孤独のグルメ』の立ち上げにも関わっていたということで
ある意味では氏も「原作者の一人」と言えるんじゃないでしょうか。

そんなわけでこちらの『小説 孤独のグルメ 望郷篇』ですが
まず感じたのが主人公、井之頭五郎のキャラクターが
かなり変わってしまっているなあ、ということ。
TVドラマ版のゴローちゃんも漫画とはかなりキャラが違い
自分はそこらへんがなかなか受け入れられなかったタチなんですが
本作は漫画版ともドラマ版とも違う「第三のゴローちゃん」になっている印象。

原作漫画のゴローちゃんは店舗を構えない個人事業主という不安定な立ち位置ではあるものの
その実けっこう堅実派で地に足の着いた生活を送っていた印象があるんですが
(そこらへんの思い切りのなさを小雪に「意気地無し」と言われていましたね)
この小説版では一人称が「オレ」で統一されていることからも分かるように
「いかにも意識高い系のサブカル的アウトロー」になってしまっているんですよ。

例えば第1回では「オレを軽んじたの?」と悪態をつく
(よく訪れていた立ち食い蕎麦屋が潰れており、何も聞かされていなかったことに対して)
原作のゴローちゃんには無いような自意識過剰さがあり
第14回では浅草寺で引いたおみくじの結果を「嘘つけ」と一蹴、
更には高校時代にはダブルデート、大学時代には友人と格闘技に夢中、
スポーツジムで水泳コーチのアルバイトをして子供たちに大人気、と
どこのリア充か分からないような過去までが付加されて
「古武術の道場で毎日絞られていた」というストイックさはどこへやら、
いかにもサブカル雑誌の編集者が好きそうなキャラ(偏見)へと
変貌してしまっているんですよ。

またこの小説版ではさすがにゴローちゃん一人で話を回すのが難しかったためか
漫画にも登場した友人、滝山に加えて何人かのオリジナルキャラが登場するんですが
その交友関係にもちょっとモヤモヤしてしまうところ。

第3回では「ハッサク君」なるコンサルタント・イベント運営を生業とする
馴れ馴れしい若者に好感を覚えるシーンがあるんですが
こういう人間にはどちらかと言えば「胡散臭さ」を感じるほうが
原作のゴローちゃんとしては自然だと思いますし
第11回でレストランを経営している「茅野くん」も高飛車で横柄な態度、と
ゴローちゃんなら辟易しそうなキャラにも関わらず
「カレとの付き合いを好んでいる」ということになっているのが引っ掛かるところ。
この回では別れた小雪について茅野くんと会話をするのですが
その会話の内容にもかなりの違和感というかゴローちゃんっぽくない部分を感じます。

そして極めつけは第5回の導入部。
ここでゴローちゃんは画を描いていた若いカップルに遭遇するんですが
「画を眺めさせてもらったお礼にお昼を御馳走させてくれないか」
とゴローちゃんが食事に誘うんですよ。
いやいや心の中でいろいろ思っても話しかけられないのが井之頭五郎でしょ!
どちらかと言えば逆に話しかけられて狼狽するほうですよ!
それなのに自分から若いカップルを誘うだなんてありえない!
これじゃ単なる勘違いした自意識過剰オジサンでしかないですよ!
っていうかこの小説全体に漂う雰囲気がそれなんだよ!
謎の交遊関係や執拗に引用される歌の歌詞なども含めて
意識高いサブカル系編集者が自分の好みのままに自己投影した結果生まれたのが
まさに本作のゴローちゃんなんですよ!

というわけでキャラの違いにはかなり戸惑いがあり
「こんなの井之頭五郎じゃない!」と叫びたくなるような部分はあるんですが
中には「うん、これこれ!」と納得出来るようなところももちろんあります。

滝山に姉がいる、という設定はいかにもそれっぽいですし
第16回で登場したゴローちゃんの義理の兄が
「眼鏡をかけたインテリで図書館司書」なのもイメージ通りといった印象。
また「望郷篇」の名前の通り本作には過去に思いを馳せるエピソードが多いんですが
中でも床屋で髪を切ってもらっている間に
夢うつつで亡き父親と寿司を食べに行ったことを夢想する第4回は
『孤独のグルメ』らしい寂寥感があり非常に秀逸です。
(原作の鳥取砂丘の話に似ていますね)
他にも第8回の回想シーンで夢を語る小雪に対し
自分を蚊帳の外に置く態度を取って彼女を怒らせてしまう空気の読めなさも
非常にゴローちゃんらしいところです。
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第9回でのアームロック回への言及、
第14回での豆かんの甘味処の再登場(本作では休業日のため味わえず)、
第16回での「高校で野球をやっている甥っ子のフトシ」の登場、
第18回の駅弁回ではジェットシウマイへで失敗したことの回想、と
原作から地続きになっているファンサービス的な描写も随所にありますし
それだけにゴローちゃんのキャラが違うのが惜しいなあ、と思うんですよ。
「企画の立ち上げから作品に直接携わっていた編集者」という立場では
キャラに自己投影するなというほうが難しかったと思いますし
壹岐氏には監修や原案という形で世界観の構築に徹してもらって
小説自体は別の人に手掛けてもらったほうがよかったんじゃないかなあ、
とも思ってしまったり。

そんなわけで原作漫画版でもテレビドラマ版でもない
独自のゴローちゃんが印象的だった『小説 孤独のグルメ 望郷篇』。
原作漫画、TVドラマに続く第三の『孤独のグルメ』と考えればアリな気もしますが
個人的にはこの小説版のゴローちゃんはあまり好きになれませんでしたし
やっぱり小説まで買うような人は「いつものゴローちゃん」を求めていると思うんですよ。

今回は完全オリジナルでしたが『孤独のグルメ』の小説が今後も出てくれるのなら
逆に原作をそのままノベライズしたような本も読んでみたいなあ、と。

 

 

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   グルメ漫画, アニメ・漫画

映画『マジンガーZ / INFINITY』の脚本を手掛けた小沢高弘(うめ)氏自らの筆による
公式ノベライズ『小説 マジンガーZ / INFINITY』。(2018年1月発売)

映画本編の感想はこちら。

映画 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」 感想
https://tktkgetter.com/blog-entry-1264.html

映画がとにかく面白かったので今回のノベライズ版も買わない手は無かったんですが
『INFINITY』の面白さっていうのは「ぼくらのマジンガーZの大活躍」に尽きるわけで
そのあたりをそのまま文章にしてもビジュアル的に映像作品に勝てるはずがないので
小説でどんなふうにZの活躍が描かれるのかは楽しみ半分、不安半分だったり。

そんなわけでこちらの小説版『マジンガーZ / INFINITY』。
基本的な内容としては映画そのままで極端な変更などはなかったんですが
「尺の都合などでカットされた部分やコンテ段階で追加されたシーンなどを加えて再構成」
「そのままアニメにしたら二時間半から三時間になってしまう」
とあとがきに書かれていたように
映画では「マジンガーZの活躍には必要ないんだよ!」とばかりに割愛されたであろう
「リサが発見されてから甲児のパートナーとなるまでの彼女の分析シーン」
「安保理会議で弓教授(首相)が責められるシーン」
などの人間ドラマの部分(良くも悪くもリアルっぽい)がかなり増えていた印象。

その他にもグレートの前にあしゅら男爵が現れるシーンで
鉄也とあしゅらが初対面であることを示す「はじめまして」というセリフがあったり
マジンガーを起動させるためにボスが研究所の旧スタッフを集めるシーンがあったり
(それに伴ってみさとさんの立ち位置も少しばかり変化)と
細かいところでの相違点がちらほら。
この小説を初期稿と考えると
「みんなが知ってるマジンガーZ」を映画にするにあたって
「細かなキャラ設定や紹介などの説明部分を削り取った」のが分かりますね。

そして映画の公開前に漫画として連載された前日談
『インターバルピース』でのエピソードについても言及しており、
漫画では原因不明のまま終わってしまった
マジンガーの暴発理由が明らかになったことも特筆すべきところ。

『インターバルピース』の感想はこちら。

永井豪/小沢高広(うめ)/長田馨 『マジンガーZ インターバルピース』 感想
https://tktkgetter.com/blog-entry-1438.html

このあたりは『インターバルピース』でのモヤモヤがようやく附に落ちたというか
いい感じにメディアミックス感が出ていると思いますね。
映画本編に『インターバルピース』と『小説版』の2冊を加えることで
『INFINITY』の世界がしっかりと補完された感じがします。

ただ後半の戦闘シーンはやっぱり映画の迫力には敵わないというか
マジンガーの活躍も含めてかなりの部分が割愛されてしまっていたのが残念だったところ。
特にあしゅら&ブロッケン~地獄大元帥~ゴラーゴン発動~の流れは映画とかなり違っており
パイルダーを分離させての戦いもマジンパワーの発動もなし。
あしゅら&ブロッケンを倒したのがシロー率いるイチナナ式の三番隊だったりと
この小説では映画よりも「リアルな量産型の活躍シーン」が多いですが
このあたりはマジンガーの活躍を求める人たちとの認識の違いがあった気がしますね。

それと後書きで「TVシリーズのZからグレートの交代劇にショックを受け、
なかなかグレートを受け入れられなかった」との回顧があり
そのあたりが無意識のうちに出てしまっていたのか
映画本編に輪をかけてグレートが不憫な役割になってしまっていた印象。
導入部での戦闘シーンでは映画よりも不承認の武器が増えており
ブレストバーンやサンダーブレークも使用不可、
イチナナ式の翼ユニットがグレートブースターと呼ばれたことでオンリーワンな部分も消失、
更にインフィニティから救出されるシーンなんて
「Zにロケットパンチで殴られて強引に引き剥がされる」という
何とも言えない状況になってしまっていますからね。
さすがにこれではグレート好きな人はいい気はしないだろう、と
他のスタッフや東映側からストップがかかったんじゃないでしょうか。

というわけで後半の戦闘シーン、アクション面では映画に軍配が上がりますが
脚本を手掛けた小沢高弘(うめ)氏が手掛けたことでノベライズとしては違和感もなく
細かい補足なども含めてしっかりと楽しめた小説版『INFINITY』。
中でも「ミケーネ語での『ゴラーゴン』の意味に言及するシーン」と
「甲児が隣接次元の仮説を知ったのがDr.ヘルが過去に書いた論文からであり、
その画期的な理論に科学者として敗北したことを吐露するシーン」の二つは
世界観やキャラに深みを与える意味でも映画本編に入れてほしかったなあ、と思いますね。
ディレクターズカット版とか……やっぱり無理ですかね?

 

 

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  アニメ映画, アニメ・漫画, ダイナミック系, 映画

映画『マジンガーZ / INFINITY』の公開前に月刊ヤングマガジン誌で連載され
TV版と映画の間の空白の10年間が綴られた
『マジンガーZ インターバルピース』の単行本(2017年12月発売)。

月刊ヤングマガジン誌でのダイナミックプロ作品というと
以前に連載されたTEAM MOON氏の『デビルマン対闇の帝王』を思い出しますが
今回の漫画を手掛けた長田馨氏の緻密で丁寧な絵柄も負けず劣らず魅力的。
ヤンマガ誌はダイナミック作品にあまり関わっていない作家さんを
選んでくれているのが新鮮味もあって嬉しいですね。

そんなわけでこちらの『マジンガーZ インターバルピース』。
話ごとにスポットが当たるキャラが異なる群像劇・短編連作的な作品なので
1話ずつ感想を書いていきたいと思います。

○第1話
というわけで第1話は我らが兜甲児を中心に
設定のみで尻切れになってしまったヘルの五大軍団の壊滅や
ミケーネの残党狩りなどが描かれるエピソード。
とは言えマジンガーZを駆って大活躍、とは行かず全体の雰囲気は淡々としたもので
「敵がいたからマジンガーZのパイロット≒英雄でいられたという現実」
「打倒マジンガーという使命に邁進することが出来る機械獣たちへの憐憫と羨望」
「テロリストのAIによって機械獣たちの矜持が踏みにじられたことに対する怒り」
などなど第1話にして本作の方向性を決定付けたというか
「大人にならざるを得なくなってしまった兜甲児」をこれでもかと見せつける展開。
うーん重い。
このあたりの悩みや迷いは映画本編のヘルとの会話で改めて指摘されることになりますね。

○第2話
第2話はヒロイン、さやかさんを中心に
映画でのそれぞれの立場(弓教授=日本首相、さやか=所長)や
世界観(光子力エネルギーによるインフラの整備や新都市)が
どのように築かれていったのか、を描くエピソード。
食事をしながら停電事件に遠隔操作で対処する、という
ともすれば地味になりそうなシチュエーションながら
肉料理にかぶりつくエキセントリックなさやかさんなど見せ場もあるのが巧いところですね。
第1話のテーマが「大人になり切れない悩み」とするならば
こちらは「誰かのために大人にならなければならない辛さ」といったところでしょうか。

○第3話
第3話は鉄也&ジュンのペアを主人公に
彼らのプロポーズから新居探しまでを描くエピソード。
デモを起こそうとするテロリストや光子力への依存に反対する住民など
1~2話との繋がりを感じさせる描写もありますが
基本的には二人の不器用な恋愛話、といった感じ。
男性がナチュラルに車道側を歩いてくれるカップルを羨ましそうに見るジュンに
後々になってから弁明したりと
鉄也さんの言葉足らずの不器用さが逆に微笑ましくも感じますね。
「大人になると効率や理屈を第一に考えてしまうけど
結局は子供の頃に夢見ていたものに戻ることになる」という結論は
甲児やさやかさんよりも一足先に目指す場所にたどり着いた、という
ハッピーエンド感もあります。

○第4話
第4話はラーメン屋を構えるようになったボスを主人公に
彼が自分を慕うヌケとムチャを再び従えるようになるまでのエピソード。
本エピソードでも大人になってしまったがゆえの遠慮や
それによる苦悩というものが描かれることになるんですが
ヌケとムチャの危機に対し大人としての立場があるがゆえに
最後までマジンガーZを出せなかった甲児とさやかに対し
「互いに心配をかけないように何も言わず干渉しないのが大人じゃない」
とボロットを駆り出すボスの格好良さが目を引くところ。
ボスは映画本編でも甲児の親友、ヌケとムチャの親分、コメディリリーフと
「変わらないボス」としての安心感、安定感を見せてくれていましたが
本エピソードがあると映画本編のボスたちに更に深みが出るというか
甲児たちが持つ大人になったことの悩みを既に乗り越えていたことが分かりますね。
映画での彼らは変わっていなかったのではなく
本当に大切なものに立ち返ることが出来ていた、といった感じでしょうか。
「自分の発言の影響力を理解しなさい」とさやかさんに説教された甲児が
ラストではその影響力を逆手に取ってボスにご祝儀を送る演出がニクいですね。
起承転結がはっきりしていて非常に好きなエピソードです。

○第5話、第6話
前後編で綴られる最終エピソードの第5話、第6話は
マジンガーZの暴発の危機に再びダブルマジンガーが並び立つことになる
甲児と鉄也を主人公としたエピソード。
映画本編でリサとの二人乗りだったことを踏まえての
「パイルダーの操縦席後ろにゆとりがある」発言や
ジェットパイルダーではなくホバーパイルダーが使われたことの説明
(グレートブースターと同じく外付け兵器扱いで非承認だったんですね)の他、
政界入りをした弓教授、立食で羽目を外すヌケとムチャをたしなめるボスなど
これまでのエピソードを踏まえた描写もあり
『インターバルピース』の集大成の雰囲気もありますね。
また全身武器のグレートと違う「ブーメランとして取り外せないZの放熱版」を
「それも含めてマジンガーZのブラックボックス」としたのは面白い視点だなあ、と。

そしてZの暴走事故を抑えてハッピーエンド、とは簡単に行かず
暗雲の立ちこめる中でドクター・ヘルの関与などを訝るさやかさんの1コマでエンディング。
このあたりのマジンガーのブラックボックスやヘルの関与については
ちょっと後味の悪い形だったので映画本編で明かされるのかと思っていましたが
特に具体的な言及などはありませんでしたね。
(後に刊行された小説版で言及あり)

というわけでこちらの『インターバルピース』。
WEB連載の『アルターイグニッション』と合わせて
映画公開直前での単行本発売となりましたが
映画本編をフォローするようなエピソードも多かったので
上映前に一読、上映後に一読と一粒で二度美味しい単行本、といった感じですね。
鉄也&ジュンのエピソードやボスのエピソードは
映画を観てから読み返すとより印象が強くなりますし
『INFINITY』が好きならしっかり押さえておきたい作品だと思います。はい。

  

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   アニメ・漫画, ダイナミック系

2018年の映画『マジンガーZ / INFINITY』の公開に合わせ
ダイナミックプロの公式サイトでWEBコミックとして連載された
衣谷遊氏による『マジンガーZ アルターイグニッション』の単行本(2017年12月発売)。
星和弥氏の『ダイノゲッター』や風忍氏の『鋼鉄ジーグ 飛龍伝』など
ダイナミックプロの公式サイトで発表された作品は
ページ数はあるのに書籍化されない(しかも公開終了してしまう)作品が多かったので
こうして単行本化してくれるのは素直に嬉しいですね。

というわけで今回の「アルターイグニッション」は
映画『マジンガーZ / INFINITY』がTVアニメ版の直接の続編、ということで
映画の予習として「初見の人にもマジンガーZという物語の始まりを知ってもらおう」
的なコンセプトで描かれたような作品。
マジンガーZの導入部はメディアによってかなりの違いがありますし
映画用に統一された設定がほしかった、みたいな事情もあったのかもしれませんね。

そんなこんなでTVアニメ版をベースにその他の設定の美味しいとこ取り、
といった感じの「アルターイグニッション」ですが
過去話となる十蔵とヘルの交流、ミケーネ文明の発掘調査に
1話をまるまる使っているのが最初に印象的だったところ。
(全5話なので1/5が過去話ということになりますね。)。
十蔵とヘルの過去というと桜多吾作氏の異色短編『闘え!!Dr.ヘル』は欠かせませんが
バードス島での事件はそのあたりをリスペクトしているようにも見受けられますね。

続く第2話では十蔵が『真マジンガー』の十蔵さながらに
超合金を用いて激しく抵抗するなどおじいちゃんが大活躍。
第1話でヘルに撃たれた伏線を解消しつつのまさかのロケットパンチは非常に巧い描写です。
TVアニメ版の「顔がそんなに怖くないおじいちゃん」が
アグレッシブなアクションを見せる様子はかなり新鮮に感じますね。

そして後半はマジンガーZを受け継いだ甲児の初戦が描かれる展開。
衣谷遊氏は『AMON デビルマン黙示録』でのデーモンがグチャグチャドロドロに融合する
気持ち悪いほどの生物的な表現が印象的だったため
「ガッシリとしたメカアクションには向いてないんじゃないか」と勝手に思っていたんですが
「しっかりと重量感のあるマジンガー」が描かれていてそこのところはひと安心。
特にパイルダーオンやロケットパンチといった見せ場を数ページかけて
じっくり見せてくれるなどのメリハリがついた演出が良かったですね。

また操縦の方法が分からず四苦八苦する様子や
後のパイロットスーツの開発へと繋がる生身の人間が乗るからこその弱点、
甲児の怒りによって暴走しかけるマジンガーなど
原作アニメの「パイオニアでありながら現在でも通じるリアルで画期的だった設定」を
しっかりと押さえてくれているのも嬉しいところ。
本筋とは関係ないはずの甲児の父、剣造の存在を随所で匂わしてくれるなど
細かなファンサービスもしっかりあります。

というわけでいろんなバージョンがあるマジンガーZの導入部から
美味しいところだけをすくって高レベルでまとめ上げた『アルターイグニッション』。
単行本一冊で綺麗にまとまっていますし
これを今後のマジンガーにおける導入部のスタンダードにしてしまってもいいんじゃないか、
とすら思ってしまいますね。
映画『マジンガーZ / INFINITY』のメディアミックスの一つとして
片付けてしまうのはもったいないくらい良く出来てますよ本当。
マジンガー知らない人にもこれだけ見せておけばプロローグはバッチリです。

あ、それと内容とは全く関係ないところでの不満なんですが
WEB連載から単行本発売までのスケジュールは
もっと余裕をもってほしかったなあ、と思いましたね。
本書の刊行が2017年12月、『マジンガーZ / INFINITY』の上映が2018年1月で
「映画の公開に間に合うように本を出したかった」
「WEBでタダで読める状態だと単行本が売れなくなってしまう」
という商業的な事情は分かるんですが
本作はWEB連載時に最終話の公開期間だけ目に見えて短かったんですよ。
なにぶん数年前のことなのではっきりとは覚えていないんですが
たぶん最終話の公開期間は2週間もなかったんじゃないでしょうか。
ちょっとそこだけが不親切だった気がしますね。はい。

  

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   アニメ・漫画, ダイナミック系