先日始まった『神速の改造戦士(サイボーグ)009』の感想とか。

先日購入した『サイボーグ009 天使編・神々との闘い編 特別編集版』の発売なども含めて
60周年を迎えていろんな動きがある『サイボーグ009』界隈ですが
9/25よりLINEマンガでのWEB連載が始まったリブート作品
『神速の改造戦士(サイボーグ)009』(通称:神ゼロ)について書いてみようと思います。

神速の改造戦士(サイボーグ)009|二見書房
https://www.futami.co.jp/lp/shinsoku009

同じく60年代に誕生した8マンとの共演『8マン VS サイボーグ009』や
初代アニメの有名エピソードをコミカライズした『太平洋の亡霊』
(両方とも単行本は昔のサンデーコミックスに合わせた装丁で発売)など
近年の『サイボーグ009』は良くも悪くも
完全にオールドファンに向けた展開がされていたと思うんですが
「神ゼロ」はそこに真っ向から殴り込みをかけてきた印象。

LINEマンガ、アプリを発表の場とするウェブトゥーン
(縦読み+フルカラーで1コマずつ読ませるような形式)、TikTokでの縦長動画による宣伝、
異世界ファンタジーに出てきそうな二つ名「神速の改造戦士」をタイトルに据えて
作画もゲームのイラスト・デザイン等で活躍するたなおたなこ氏が担当……と
「神ゼロ」は完全にスマホ世代の新規読者を見据えた宣伝・展開がされているんですね。

恐らく同じ方向性の企画だったと思われる『どろろ Re:Verse』
(「ピッコマ」で2022年より連載された手塚治虫『どろろ』の続編的なリブート作品)が
賛否以前に空気のようになってしまったことを踏まえてか
「神ゼロ」は特設サイトを連載前にオープンしてカウントダウン的に更新を行うなど
開始前からかなり積極的に宣伝を行っていた印象もあります。

そんなわけでついに始まった『神速の改造戦士(サイボーグ)009』ですが
蓋を開けてみれば予想以上に原作そのままの正統派リメイク、といった印象。
演出の違いこそあれ導入部や大まかなストーリーの流れは変わりませんし
鑑別所からの脱走時に拉致される……という
今の時代にやるのはどうなのかな、と思っていた部分も忠実に再現。
キャラのバックボーンは現代的なエッセンスを加えて完全に別物になると思っていたので
ちょっと意外な反面「ああ自分の知ってるサイボーグ009だ」的な安心感もあります。

また原作のプロローグである被検体集めの部分をガッツリと削って
島村ジョー(=009)の視点のみで話を進めているのは
平成版アニメ『THE CYBORG SOLDIER』の第1話と同じで非常に分かりやすい構成。
加速装置の発動条件や効果、デメリット等を丁寧に見せる話の展開や
他の仲間たちよりもいち早く登場した003の初登場シーンなどからは
「主人公は009! ヒロインは003! 加速装置は009の必殺技!」という設定を
最初にしっかりと見せていこう、的な雰囲気も感じます。

この10年くらいの『サイボーグ009』のメディア展開は
ぶっちゃけ一見さんお断り状態になっているものも多かったので
ここまで丁寧な導入部をやってくれるのは逆に新鮮です。
原作でもアニメでも全員まとめて登場した001~008のメンバーを
本作では少しずつ顔見せをしていく感じになっているのも
恐らく分かりやすさを意識してのことですね。

それと個人的には「ジョーを『009』と最初に呼んだのが第1話のスカールである」ところが
本作のアレンジとして印象に残りましたね。
『仮面ライダー』しかり『サイボーグ009』しかり
「石ノ森ヒーローは悪の側から生まれた正義」という分析をされることがありますが
スカールに「009」の名前を最初に呼ばせたことで
「悪によって産み出された」部分を強調しているようにも思えます。

というわけで思っていたよりも王道のリメイクで目新しい部分は少ないものの
美麗なフルカラーの画と分かりやすく噛み砕かれたストーリーで
非常に取っつきやすく楽しめた『神速の改造戦士(サイボーグ)009』。
原作はさすがに今から読むのには「昔のマンガ」っぽさがあるのは否めないので
「令和のサイボーグ009」としてはこちらがスタンダードになるくらいの
ポテンシャルがある作品だと思います。
予想以上に良かったので今後が楽しみです。

ただ一挙10話掲載で7話まで無料、ということで
最初の部分はかなりのボリュームをまとめて読むことが出来るんですが
10月以降は週に一度の更新になるみたいなので
単話読みで今の評価を維持していけるか、というのが今後の課題のような気がしますね。

縦読みスマホ形式は1ページ1コマのようなものなのでどうしても話の進みは遅くなりますし
ゼロゼロナンバーサイボーグを1人ずつ丁寧に見せていく、という本作の話作りだと
キャラ紹介的な部分だけで2ヵ月くらいかかってしまうような気もします。

本作がどこまでのエピソードをやるのかはまだ分かりませんが
ウェブトゥーンの配信作品にありがちな
「絵はすごく綺麗なんだけどなんだか話は煮えきらないまま尻切れ……」
みたいになってしまわないことを祈ります。
先述した『どろろ Re:Verse』もヒロインのロロは可愛くて好きだったんですけどね……。

それと本作のスタッフの中に
『仮面ライダー1971-1973』や『GALAXY EXPRESS999 ULTIMATE JOURNEY』
などの小説を手掛けた和智正喜氏が脚色として参加しているのが気になりますね。
氏の小説は集大成的なクロスオーバーが見所というか
ファンサービス的に他の作品や他のシリーズのガジェットを組み込んでくることも多いので
「神ゼロ」でも読者の反応を見ながら
そういった要素を入れてくる可能性はあるんじゃないかなあ、と。

そんなこんなで『サイボーグ009』の新たな試みとして
満を持して登場した本作『神速の改造戦士(サイボーグ)009』。
今後も『サイボーグ009』は新作が定期的に発表されていくとは思うんですが
今回の「神ゼロ」が成功すれば若者向けのアプローチのものも
どんどん増えていってくれるんじゃないかなあ、とも思います。
LINEマンガアプリの感想コメント等を見てみると
「神ゼロ」で009を初見という読者からも好意的な感想が多々見られますし
行けそうな気もします。

個人的には完結編『2012 009 conclusion GOD’S WAR』の完全アニメ化を
まだ諦めてないんですけどね……。

『サイボーグ009 天使編・神々との闘い編 特別編集版』を購入しました。
https://tktkgetter.com/blog-entry-1568.html

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