「サイボーグ009 conclusion GOD’S WAR 第8話」 感想
今年最後の更新となる「サイボーグ009完結編」の漫画版第8話。
今回からは主人公を005とするエピソード「ガイアの都」が始まり
小説では中巻のP16~P40に当たるストーリーが展開。
小説は中巻が出るまで数年待たされちゃったし
005の話が始まるといよいよ中盤戦に突入といった感じがするなあ。
そんなわけで今回も小説に忠実に進んでいっているんだけど
特にアマゾンの描写や005の独白、精霊たちの声にウエイトが置かれており
これまでのエピソードと比べると文字が多くて密度が濃い印象。
アマゾンの緻密な画なんかは見てるだけでワクワクするね。
ただ「植物達は、お喋り、だ。」「言ったり、している。」のような
石ノ森テイスト溢れる独特の句読点の使い方が無くなってしまったのだけは残念。
このあたりは読みやすさとの兼ね合いもあるんだろうけど
個人的には小説の文体やリズムをそのまま貫き通してほしかったところ。
それにしても首吊りや腕が千切れているコマなど
前回から妙にモロ的な描写が増えてきた気がするなあこの漫画版。
やっぱり小説の下巻がアレでアレな展開だったことを意識してるんだろうか。
「孤独のグルメ 駒沢公園の煮込み定食」 感想
孤独のグルメの最新作「駒沢公園の煮込み定食」が
本日12/18発売の「週刊SPA!」に掲載。
もともと9月掲載予定だったのが年末までずれ込んでしまったのは
ドラマ2期とかいろいろ動きがあったからかな。
今回の舞台となっているのは煮込み定食専門店ということで
ファンならばまず間違いなく「煮込み雑炊」「煮込み雑煮」「ですからごめんなさい」
などのエピソードが浮かんできてニヤニヤとしてしまうはず。
「持ち帰り…そういうのもやっているのか」のような旧作を彷彿させる台詞もあるし
最近の「孤独のグルメ」はやけにファンサービスを意識してるような気がするなあ。
このあたりは悪ノリにならない程度に入れてくれると嬉しいわ。
また「なくてけっこうコケコッコー」「原寸大にウマイ」「なるへそ」などの
オヤジギャグや独特の言い回しは今回も健在。
個人的には最初のページで
ノートパソコンを前にバリバリ仕事をするゴローちゃんが新鮮だったり。
倉庫の整理から商品の発注まで一人でこなすぞ!
それにしても今回の「週刊SPA!」は妙に品薄だったような。
近所のコンビニ回って6軒目でようやく見つかったわ。
やっぱり自分みたいに「孤独のグルメ」掲載時だけ買う人って結構いるのかな。
永井豪 「新装版 マジンサーガ 第6巻」 感想
大増ページで21世紀に蘇った「新装版マジンサーガ」の最終第6巻がついに発売。
長年待ち望んだ扶桑社版の続きが今ここに……!
というわけで今回は5巻ラストの悪醜羅男爵の宣戦布告に続く形で
扶桑社版の6巻後半部分からスタート。
導入部として20Pほどの描き下ろし戦闘シーンがあり
各地の戦線でマジンガーが戦っているのが分かりやすくなっているのが嬉しいところ。
旧版は駆け足気味で「火星全土を戦場とした戦争」のイメージが
少し掴みづらいところがあったからなあ。
そしてサイコジェニーが「マジンガーZを討つ!」と宣言する
P126(扶桑社版6巻・最終ページ)以降は完全新作のストーリーが展開。
サイコジェニーとの戦いや奪われたマジンガーマスクの奪還が中心に描かれ
合田曹長の再登場やアニメ「真マジンガー」を彷彿させるガミュラQ3との共闘など
最終巻に相応しい大規模で緊張感のある戦闘シーンが目白押し。
潜入作戦の中で仲間たちが次々と倒れていく流れは
『バイオレンスジャック』の「逆襲ハニー編」なんかを思い出したり。
天真爛漫なガミュラとそれに翻弄される甲児のペアは
戦いが激しさを増していく中で一種の清涼剤的な感じになってる感じだね。
それだけに「悲しい生物兵器」としての最期が際立つわ。
そしてラスト十数ページで描かれる最終章「新たなる始まり」は
ロボット兵轟神≒ボスボロットの顔見せに始まって
ベガ星連合軍を率いるガンダル司令の登場、
暗黒大将軍、ゴーゴン大公、神皇帝・地獄が一堂に会する見開きページ、
そして不動明が変身するデビルマンXの降臨と
清々しいほどの「本当の戦いはこれからだ!」的展開。
後書きによればデビルマンマスクは単なるZのデッドコピーではないみたいだし
これからは物質を超越した「Z」と未知なる「X」の戦いになっていくんだろうなあ。
マジンガーZ対デビルマンX! 字面だけで燃えるわこれ。
というわけで当初の予定通り無事に完結(?)した「新装版マジンサーガ」。
サイコジェニーやガミュラとも決着が付いたし旧版よりは区切りがいいはずなんだけど
「続きが読みたい!」「この後どうなるんだ?」と気になる終わり方なのは変わらず。
特に後書き「新たなる始まり」では
本編では描かれなかったヘルの過去、悪醜羅やブロッケンが復活する今後の展開、
そして甲児が汚染された地球を救うという最終章(?)にまで言及しており
『バイオレンスジャック』以上の集大成ワールドになっていくような気がするし。
とにもかくにも永井豪氏本人によって「永遠に続く物語」と明言されてしまった本作。
7巻以降が出るにしろ出ないにしろ「終わらない」ことを宿命付けられてしまったわけで
かつて『神州纐纈城(マンガ版)』の解説で永井氏が書いていたように
「未完って面白い!」「結末は読者の手に委ねられた!」と
読者一人一人がそれぞれの「サーガ」を紡いでいけってことなんだろうなあ、うん。
ところで今回の新作部分って絵柄がバラバラというか
明らかに90年代当時のタッチで描かれてるコマが所々にあるような気が。
この十数年間少しずつ描き溜めていた部分もあるんじゃないかな、と感慨深くなったり。
あ、あとグレンダイザーの再登場が無かったのだけは残念。
顔見せくらいしてほしかったわ。
映画 「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」 感想
というわけで遅ればせながら観てきました映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」。
小学生の頃に旧劇ブームの洗礼を受けてどっぷりハマった身としては
「まさか十数年経ってもエヴァの映画観てるとは思わなかったわー」と
結構冷めた目で見ていられる部分があったり。
ストーリーは4部作の3作目ということで完全に「次回に続く」形になっており
「導入部のコンテナって超立方体じゃん! 漫画『度胸星』のテセラックじゃん!」
「『ヱヴァQ』のQはQ方向のQだったんだよ!」
「『度胸星』で『赤い大地』ならこれラストは火星に飛ぶんじゃね?」
などなどまあいろいろ言いたいことはあるんだけど
細かい考察はいろんなところで語られ尽くされてしまった感もあるし割愛。
というわけで以下、グダグダと。
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ここからは個人的な見解になるが、
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」は「落とし前を付ける物語」だと認識している。
90年代以降のアニメを思弁的、内面的な流れに持っていった責任を取り、
(余談だがその後『機動戦艦ナデシコ』によって
正統派ロボットアニメを当てこする流れは完成してしまうこととなる)
エヴァンゲリオンを単なるロボット・エンターテイメントとして回帰させる。
そうした意図を節々から感じるのである。
実際に「序」そして「破」では各キャラの「物事の受け取り方」を変えることで
全体的な展開をマイルドで分かりやすいものへとしているし、
TV版及び旧劇場版では最終的に狂言回しとなった綾波レイをヒロインと位置付け
「破」ラストで高らかに「綾波を返せ」とシンジに宣言させている。
それらを考えても「純粋なエンターテイメント」を目指していることは明白である。
さて、そして今回の「Q」である。
本作は一見、フラストレーションの溜まる演出を増やしており
「破」までとは大幅に様相を変えているように見えるが
その本質は「序」「破」とさほど変わっていない。
それは、エンターテイメントを目指す上で邪魔になってしまった「昔のエヴァ」を
完全に切り捨てることを目的としている点である。
あくまでも過去のリメイクにすぎなかった「序」、
異分子として捉えられかねない新キャラを登場させた「破」、
その流れを受けた今回の「Q」では遂に既存キャラのデザインを大幅に変え、
時系列を一気に飛ばすことによって全く異なる世界観を提示している。
こうした段階を踏んだ変化を考えれば「Q」の流れは決して唐突なものではない。
そのような「過去を断ち切ること」は
新しいことをしなければ前に進めない(カヲル)
世界は可逆的なものではない(冬月)
などの台詞に代表されるように作中の節々に見られる。
本作のテーマがここにあることはほぼ間違いないであろう。
終盤においてシンジは「世界を昔のものに戻すこと」に固執し
結果として巨大な過ちを犯してしまう。
そしてアスカはそんなシンジを「ガキ」と連呼して罵倒する。
過ちを犯したシンジはアスカに背を向け、だだっ子のような態度を取る。
このあたりからは「14年も経って昔のエヴァに拘ってる奴はみんなガキなんだよ」
的なメッセージをひしひしと感じるのである。
そして本作のラストにおいて
シンジはこれまでキーアイテムとされていたウォークマンを捨て、
「前の綾波レイ」に囚われていた本作のレイは
自分の意思で生きることを選択し歩き出している。
この二つは「過去を捨て前に進むこと」の象徴だろう。
「Q」は舞台設定やキャラの年齢を大幅に変えてはいるものの
カヲルとの交流やその死、エヴァとシンジを用いたインパクトの発動など
旧TV版20話~24話及び旧劇場版を意識した部分は多々見られていた。
しかしここから先は誰も知らない未知の領域に突入するのである。
つまりここで「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」は
ついに過去作「新世紀エヴァンゲリオン」からの脱却を果たしたのである。
もう過去を振り返る必要はない。
待っているのは新世界の物語だけである。
そんなわけで続く完結編「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」は
タイトルに反復記号を内包しながらも
リピートを否定する話になるんだろうなあ、と予想してみたり。
というわけで監督のメッセージを真摯に受け止めなければならない
旧劇場版リアルタイム組としては
「当時小学生だったガキも立派な屁理屈をこねる大人のガキになりました!」と
こんな長文を掲げて開き直るしかないのである。てへぺろ。