昨年9月よりLINEマンガで連載中の『サイボーグ009』の最新リブート作品
『神速の改造戦士(サイボーグ)009』が横読みコミックに再構成されて
単行本の第1巻が発売、ということでさっそく購入しました。
いやーしかし完全にスマホ閲覧を意識した縦読みフルカラーの本作が
紙の本で刊行されるというのは完全に予想外でしたね。
LINEマンガでの連載は単行本作業のために先月から約1ヶ月間の休載に入っていますが
縦読みの作品を横読みに再構成するのなら全ページに手を入れる必要があるでしょうし
それくらいの休載期間は必要だよね、といった感じです。
というわけで通常の本と同じ形式の本になったことで
ようやく話のテンポや構成などを原作コミック等と比較出来るようになったわけですが
単に複数のコマをまとめて1ページにして本にしているのではなく
フキダシの位置の調整、変更などがほぼ全ページにわたって行われていたり
1ページまるまる使った大ゴマなどもきちんとB6サイズに合わせたものに変更されていたりと
今回の書籍版は予想以上に手が込んでいる印象。
話はもちろんLINEマンガ版と同じなんですが
読むテンポや1ページで目に入ってくる情報量が変わったことで
マンガの演出というか読者の受ける印象も変わっている部分もちらほらありますね。
個人的には「コードネームは……」「009」のくだりなどは
1コマに全部入れてしまっている書籍版よりも
スワイプでワンクッション置く形になっている縦読み版のほうが好きだったりします。
逆にゼロゼロナンバーサイボーグたちを見開きで横並びにして紹介するところは
横長の書籍板の演出のほうが一枚上手、といった感じですね。
まあこのあたりの演出の違いは個人の好みになるんじゃないでしょうか。
また今回の紙書籍版は定価が1100円+税と
B6コミックとしてはかなり高めに感じてしまうんですが
全ページフルカラーで紙質も非常に良く実物を手に取ると納得の値段、といった感じですね。
このあたりのクオリティは出版社や本によって玉石混淆ですからね……。
他にも作画のたなおたなこ氏がSNSで発表したイラストや
石森プロのコメントなども掲載されており
WEBコンテンツをこまめに追えなかった人も大満足の構成。
ただ紙の本になったことでページ数も分かるようになったんですが
約180Pで10話まで、というのはさすがにちょっとテンポが悪いような気もしますね。
今回の第1巻は回想の途中で切れていて構成的にもちょっと不自然な部分がありますし
あと1~2話くらい、せめて002周りの回想が終わるまでは収録してほしかったなあ、と。
そんなわけでこちらの『神速の改造戦士(サイボーグ)009』の単行本第1巻ですが
自分は縦読みに抵抗もないし無料で読ませてもらっている連載版で十分に満足しているので
ぶっちゃけ本を購入したのは「お布施」の意味合いが非常に強かったりします。
先日始まった『神速の改造戦士(サイボーグ)009』の感想とか。
https://tktkgetter.com/blog-entry-1569.html
近年の『サイボーグ009』はオールドファン向けの展開が
中心となっていることについては以前にブログに書いているんですが
今回の『神速の改造戦士(サイボーグ)009』の単行本の発売は
「紙の本での横読みに拘るオールドファンが潜在的にどれくらいいるのか」の
試金石として刊行された気がするんですね。
縦読みのフルカラーコミックを再構成して横読みの書籍として刊行する、というのは
ウェブトゥーン業界の活性化に伴ってここ数年で増えてきたもののまだまだ少なく
本作の紙書籍化はメインターゲットの年齢層が高いであろう
『サイボーグ009』だからこその試みなんじゃないかと思うんですよ。
そうでなければここまで手間をかけて紙書籍版を出す必要はありませんし。
で、「試金石」という表現をしましたが
過去の多種多様なWEBコミックを考えても今回の第1巻が売れなければ
容赦なく紙の本は打ち切って電子版のみの発売に舵を切ってしまうと思うんですよ。
巻末には2巻が春に発売予定、との旨がありますが
「買わなきゃそれ以降は出ないぞ」と
ここまで危機感を持ってしまうような本は初めてかもしれません。
そういう意味でも「お布施」だと思っているのです。
そんなわけでいろいろと思うところのある『神速の改造戦士(サイボーグ)009』ですが
この単行本が出た時点で配信されている最新話では
「後顧の憂いをなくすために脱出を中断してBGの基地に殴り込みをかけて0010と遭遇」と
序盤に比べてかなりアレンジの入っている展開になっているのも気になるところ。
0010をここで登場させたあたり後のエピソードの敵をちょこちょこと出しつつ
「誕生編」のみのリブートで終わらせてしまうんじゃないか、と思う一方
『サイボーグ009』をリメイクする以上「ミュートス」「どこ落ち」などの要素は
絶対にどこかで入れてくるだろう、との確信もありますし
どんな形の物語になっていくのか期待半分、不安半分で楽しみにしていきたいと思います。
ちなみに下のamazon広告に載せているのは
好きだったのに途中で紙の本が出なくなってしまったWEB連載の漫画たちです。
『焼肉店センゴク』などはアニメ化もして原作も約10年の長期連載で円満終了だったので
WEBコミックの人気と紙の書籍化のハードルはまた別のところにあるのかなあ、と。