先月発売された永井豪氏のSF怪奇傑作選「邪神戦記」。
文庫化もされている短編集からの再録がほとんどということで
「別に買わなくてもいいかな」と思っていたんだけど
未発表作品「天女カラス」が収録されているという話を聞き思わず購入。
以下、各作品ごとのちょっとした感想。
・邪神戦記(「手天童子」改題)
表題作。後の長編「手天童子」のプロトタイプ的な作品ということで
過去の伝承が関わってきたりと似ている部分がちらほら。
掲載が少女漫画誌ということを意識したのか
永井豪作品としては珍しく主人公が一貫して「守られるキャラ」として
描かれているのが印象的な感じ。
・面
個人的に今回の短編集で一番好きな作品。
「手塚治虫先生だったらどうするか」をイメージしながら描いていたらしく
短いページでヒネりのあるストーリーが展開されるのは確かに手塚作品風。
とにかく無駄がなく純粋に「上手い」と思わされる一作。
・白い世界の怪物
とある民俗行事をテーマとしたホラー風短編。
ラストのオチありきで描かれているせいか
そこまでの流れが長すぎというか引っ張りすぎのような気も。
個人的にはもうちょっと少ないページでまとめてくれたほうが好みだったり。
・霧鏡
「面」の次に好きな作品。
映画や小説のあらすじ通りに人が死んでいく……というのは
推理モノなんかでよくある設定だけど
本作はホラーということで超常現象を絡めて「得体の知れなさ」を強調した印象。
不安のままに終わるラストも王道でいい感じ。
・翠湖
漫画家生活40周年記念の小冊子「豪ちゃんマガジン」が初出となる
収録作の中では一番最近の作品。
同じく2000年代の作品である「天空之狗」の序盤に近い雰囲気で
軽い短編連作としてシリーズ化出来そうな感じも。
でも最終ページの「ガッチャ!」はさすがにどうかと思う。
・天女カラス
本短編集の目玉となる未発表作品。
もともとはビデオシネマの企画だったということで
全体的にお色気シーンが散りばめられており確かにそんな感じ。
企画が流れたのは予算の関係らしいけど
亡霊武者の大軍と立ち回るシーンがあったりと確かにお金はかかりそうだなあ、と。
ラストの展開はどこかで見たような気がしたけど
「ゴッドマジンガー」の青児&ハニーとほぼ同じシチュエーションだねこれ。
絵を志す学生という主人公のキャラデザインは
「激マン!」のながい激に受け継がれているような気がしないでもない。