阿修羅王ルシファーの指揮の元、神々との戦いに決着を付けるべく
自らの宇宙へと帰ってゆく悪魔の戦士たち。
二つの世界の繋がりが完全に閉ざされようとする中、
かつて不動勇希だった勇者アモンもまた、愛する者たちに別れを告げることとなる……。

……えーとそんなわけで現世での戦いを終えて異次元へと帰還する悪魔たち、
そして物語は一気に10年後に飛んで
勇希を信じて祈りを捧げる美紀ちゃんの姿で大団円となった『デビルマンサーガ』ですが
いやー正直前話までの大波乱の闘いを考えると
びっくりするくらい綺麗にまとまったラストだったなあ、というのが
一番始めに思ったことでしたね。

いや結局1回しか出てこなかったデビール変身とか
再登場もなく存在意義が分からなかった生物兵士と「バード」の存在とか
やっぱり今回も描かれることのなかった神々との決着とか
本当に親友だったのかよ、と疑いたくなるくらいに関係性が薄かった不動とアスカの間柄とか
その他の細かい「やんやかんや」も含めて終盤になって一気に唐突になってしまった展開には
いろいろ言いたいことももちろんあるわけなんですが。
(12巻までのんびり続いてたのがラスト1冊でいきなりぶっ飛んだようなものですし)

それでも「うーん綺麗に終わったなあ」と素直に思えるのは
ひとえに「人類が生き延び復興する、未来に希望の持てるラストだった」
からだと思うんですよ。

無印『デビルマン』でも『レディー』でも、
『魔王ダンテ(マガジンZ版)』でも滅亡してしまった人類が生き延びた、
ということだけでも本作のラストは特筆すべきことですし
復興した世界や「10年後に勇希のことを想う美紀ちゃん」の描写は
『バイオレンスジャック』ラストの「ジャックに思いを馳せる老年となった逞馬竜」に
似たものがあることを考えても
本作のラストは円満終了と言っても過言ではないのかなあ、と思います。
「お腹の中にあなたの子供が~」はちょっとベタすぎる気もしますが
それもまあそれはそれでヨシ!

で。そうした「人類が滅びない」救いをもたらしてくれたのは
本作の悪魔、アモンたちが最後に見せてくれた「優しさ」からだと思うんですよ。

『デビルマンレディー』では現世を巻き込むことを厭わない悪魔と天使たちの戦いの中で
人類が無力感に苛まされつつ滅びてしまったのに対し、
『デビルマンサーガ』の悪魔たちは
人類を巻き込んでしまったことに詫びを入れてこの世界を去っていく。
そうした「優しい悪魔たち」によって人類の破滅が回避された、というのが
本作『デビルマンサーガ』の持つ救いであると思うんですよ。
月並みな言い方になってしまいますが
「他者の気持ちに寄り添うことが出来れば破滅は回避される」というのが
現在の世界情勢などに対する永井豪先生の回答なのかもしれません。

わびるマーン!

そして物語の終盤でアモンに飲み込まれる形で消滅してしまった勇希にも
きっと救いが残されているのではないか、というのが個人的な見解。

というのも永井豪先生は同じ「サーガ」の名を持つ『マジンサーガ』の後書きで
次のように書いているんですね。

(前略)
兜甲児は重い十字架を背負って火星に行く訳ですが、
それはマジンガーZを使って単に飛んで行くだけではなくて、
ある意味輪廻転生をして新しい兜甲児として”弓さやか”を助けにいくのです。
だから、火星での終わりなき戦いを戦い抜いて、
その先に灼熱の星になってしまった地球まで、現時点では
どうしたら救えるのか分からないですけれど、ヒーローである以上
輪廻転生を繰り返しても核に汚染された母なる星を見捨てる訳にはいかないのです。
(中略)
『マジンサーガ』は”英雄伝”や”冒険談”という意味を持つ”サーガ”を
タイトルとしているように、永遠に続くスタイルにしておかなければと思っていますし、
次世代に引き継がれるかもしれません。
(後略)

マジンサーガ(講談社版)第6巻 あとがきより引用

ここでは火星を舞台とした『マジンサーガ』において、
兜甲児が最終的に滅亡した地球へと帰還し星を救うことが仄めかされていますし
マジンガーZとなって火星で戦う甲児を「生まれ変わった」と表現するならば
アモンになって異次元で戦う不動勇希もまた同じだと考えることが出来ます。

なので今後『デビルマンサーガ』の続きが描かれることはないとしても
異次元での激しい戦いを終えていつの日か美紀ちゃんの元へと帰ってきた勇希が
優しいAIを持つスーパーアンドロイド、タレちゃんを完成させ、
その結果こちらの世界では異次元宇宙のようなAIの暴走による破滅は起こらない、という
英雄の帰還によるハッピーエンドがきっと待っているんじゃないかと思います。
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というわけでいろいろ深読みしつつ
「エピローグのその後」まで楽天的に考えてみましたが
細かいことは抜きにしてあの『デビルマン』の最新シリーズを
足掛け5年、単行本13巻にもなる長編でリアルタイムで読むことが出来たのは
それだけでファンとして幸せな時間であったと思うのです。
ありがとうございました。

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