1974年の放送開始から50年を迎えようとしている『ゲッターロボ』シリーズの
アニメ作品全てを網羅した『ゲッターロボアーカイブ THE ANIMATION』が発売。
というわけでA4サイズのフルカラーで約240ページ、
値段も約4000円とすべてが大ボリュームで発売された本書ですが
いわゆる解説書や辞典の類ではなく設定画集ということで
ストーリー紹介やキャラクター解説、放送データなどはほぼ皆無で
とにかく圧倒的な数の設定画を見せてくれる内容。
各章の扉ページもキャラクター対比の設定画などになっており
DVDのジャケット画像なども一切掲載されていないのはある種の潔さを感じます。
まああれも欲しい、これも欲しい、と全部入れてしまったら
ページ数が倍になっても足りないのでそのあたりは仕方ないのですが
「○○話に登場」みたいな記載が随所にあるので
そこから逆算する意味でも各作品のタイトルリストくらいは欲しかった気がしますね。
そして収録作品はTVシリーズからOVA、東映まんがまつり、
ゲーム『ゲッターロボ大決戦!』のアニメパートまで
まさに「ゲッターロボのアニメの全て」という大盤振る舞い。
『ゲッターロボ』最初期のシブすぎるデザインや
『G』の新主人公として予定されていた来栖丈など企画段階のものも収録されていますし
「ゲストキャラクター設定」と銘打たれたページもあり主要キャラ以外の部分も充実。
特に『ネオ』と『新』の設定画ががっつり見られたのが嬉しかったですね。
この頃はOVAというメディア自体が下火になりつつあったこともあり
ビジュアルファンブックなどのムック本も出版されず
両作品はDVD付属の薄いブックレットや『ゲッターロボ全書』が数少ない資料、
みたいな感じでもありましたので。
アニメ制作には詳しくないんですが
鉛筆画に色指定していたものがデジタル彩色になって
最新作『アーク』では3DCG……というのは
日本のアニメの歴史そのものを見ているようでもありますね。
また個人的に本書の一番の特色は
『ゲッターロボ』『G』『號』の東映によるTVアニメと
『真(チェンジ!!)』以降のOVA3部作から『ゲッターロボ アーク』までの作品全てが
同等に、対等な形で収録されているということだと思うんですよ。
アニメと漫画が同時に企画・進行されたTV3作品と
「キャラや設定を再構築し、漫画版の要素をふんだんに取り入れた」OVA3作品以降は
完全に別物で相容れない存在、みたいな世代交代的なイメージすら出来てしまった中で
両者を「ゲッターロボのアニメ」という括りによって同じように収録し
同じように取り扱っている本、というのはそれだけで貴重だと思うんですよね。
まあぶっちゃけ「スパロボが悪いよスパロボが」と言ってしまうのは簡単なんですが
90年代後半から00年代前半のロボットアニメにとって
ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズの影響力っていうのは
計り知れないものがあったと思うんですよね。
OVA3部作のうち『真(チェンジ!!)』だけが知名度が高かったり
「TV版とOVA版は共存できない」みたいな固定観念みたいなものがあったりするのは
間違いなくスパロボでの参戦状況が大きく関わっているでしょうし。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム』なども『SDガンダム G GENERATION-F』や
『第2次スーパーロボット大戦α』でスポットが当たるまでは
「富野監督原作なのに知名度がない」「隠れた名作」みたいな扱いでしたからね。
それがゲーム参戦以降はあれよあれよという間にガンダムエースで連載が始まって
現在進行形の長期シリーズにまでなってますからね。
そんなわけでちょっと話がずれましたが
正直なところTV版『ゲッターロボ』『G』『號』については
過去の『ゲッターロボ大全(+続刊のG)』や『ゲッターロボ全書』のほうが詳しいですし
『真(チェンジ!!)』はビジュアルファンブックが出ていますし
直近の『アーク』は「Blu-ray付属の小冊子」「アニメオフィシャルワークス」など
設定資料やインタビューが収録された本が充実していますし
個々の作品を見てみれば本書と内容がかぶっている、
あるいは本書以上にいい本というのはいくつも出ているんですよ。
ただ「全ての作品を1冊の本に収録した」「A4版のフルカラー」となると
今回の『ゲッターロボアーカイブ』以外の選択肢はないですし
完璧で究極の本じゃないけど唯一無二の本だよ、というのが
自分としての本書の評価になるのです。
一家に1冊あれば安心な全部乗せ、みたいな感じです。
あ、それと本書の出版社は以前に
『SDガンダムヒストリア SDガンダム外伝編』をこのブログで取り上げた
玄光社さんなんですけど
「SDガンダムヒストリア SDガンダム外伝編」 感想
https://tktkgetter.com/blog-entry-1479.html
そちらの記事で取り上げた誤植について
本書でも同じ方向性のミスがいくつか見受けられるんですよ。
「ヒストリア」と比べると数は少ないんですが
こちらは文章量も少ないので悪目立ちしてしまっている感じです。
重箱の隅をつつくようであんまりこういうことは言いたくないんですが
さすがに2冊続いて似たようなものにぶち当たってしまうと
「編集部さんのほうに問題があるのかなあ」みたいなことを
思ってしまったりもするのです。はい。