というわけで以前にも何度か触れた
RPGツクールの「Parallax Mapping」について
自分の意見というか思うところをつらつらと書いてみようと思います。
この「Parallax Mapping」については海外の方による
上の紹介動画などを見るのが手っ取り早いんですが
要はエディタのマップチップ、タイルセットを使わずに
遠景などでマップを描いてみよう、というテクニックであり
それ自体はツクール2000の頃からよく使われていたものでした。
自分がよくやる一枚絵ワールドマップも
広義の「Parallax Mapping」と言えるかもしれません。(宣伝)
それがここ数年で非常に凝った海外製のマップが登場したり
公認販売サイト「Degica」のサンプル画面として使われたり
最新作「RPGツクールMV」では遠景マップを簡単に作れる機能が搭載されたりと
最近になって妙にプッシュされるようになった印象があります。
ただ個人的には「Parallax Mapping」については不満もあるというか
そんなに手放しで持て囃していいものじゃないぞ、と思っているので
そのメリットとデメリットについてまとめてみたいと思います。
●「Parallax Mapping」のメリット
(1)見栄えのいいマップが作れる!
恐らく「Parallax Mapping」を使う一番のメリットはこれだと思います。
マップチップの座標に縛られないオブジェクトの配置、
エディタの上層や下層を無視してレイヤーを重ねた立体感、
ゲームの作風に合わせた絵画的なマップなどなど
通常では作れないようなマップを生み出すことが出来るのが最大の魅力です。
見た目がいい、というのはそれだけでアピールポイントになるので
公式でプッシュしたりサンプルゲームに採用されるのも納得です。
(2)動きが軽くなる!
「Parallax Mapping」を使うことで動作が軽くなるか重くなるか、
というのはその条件によって変わってくると思いますが
少なくとも複雑なマップを作る場合は使ったほうが明らかに軽くなります。
マップが重くなる一番の原因は「イベントチップを敷き詰める」ことなので
イベントチップで階層を作っているようなマップの場合は
一枚絵にすれば一気に軽くすることが出来ます。
自分で作ったマップを画像化して確かめたので間違いないと思います。
●「Parallax Mapping」のデメリット
(1)一枚絵だから動かない!
マップチップを使った場合はタイルセットの仕様により
波打つ水の様子や流れる滝などの「動きのあるマップ」を作ることが出来ますが
「Parallax Mapping」で描かれたマップは当然ただの一枚の絵なので
こちらは動かすことが出来ません。
もし動かしたい場合は座標を合わせてマップチップを上に敷く、
並列処理でチマチマ動かす……などの
本末転倒なことをしなければなりません。
(2)通行設定やプライオリティとはミスマッチだ!
上の紹介動画の作業を見ると分かりますが
「Parallax Mapping」でどんなに綺麗でなめらかなマップを作ったとしても
通行設定や表示のプライオリティなどの設定は
最終的にエディタ上で行うことになります。
そのため1マス(VX系では32*32、MVでは48*48)単位でしか設定出来ず、
プレイヤーが操作するキャラクターも当然1マスずつしか動くことが出来ません。
ここで「歩けそうなのに歩けない」「歩けなさそうなのに歩ける」という
滑らかなマップとキャラクターの動きとの間の齟齬が生まれてしまいます。
実際に円形の画像マップを作ってその上を歩かせてみれば
違和感が分かると思います。
(3)移動出来る場所が分かりにくい!
これは(2)から直接繋がってくることなんですが
滑らかなマップ、細かく描かれたマップになればなるほど
プレイヤーにとってはどこにいけばいいか分かりにくくなる、という危険があります。
このあたりはコンシューマーだとPS時代のFFなどがいい例だと思います。
FF7やFF8で「移動出来る場所が分かりにくい!」とさんざん言われて
FF9では移動可能な場所に!マークが出るようになったという経緯がありますし。
●結論
というわけでここまで長々と書いてきましたが結論。
「Parallax Mapping」を使うことで確かにマップの見栄えは良くなります。
ただ「見栄えのいいマップ」と「プレイしやすいマップ」は別物であり、
RPGツクールが「マップチップ上をキャラクターが歩く」ことを想定している以上、
一枚絵マップはその部分でミスマッチを起こし
プレイヤーに違和感を与えてしまう、という可能性を常に孕んでいます。
それこそキャラクターの移動単位、通行設定、表示のプライオリティなど
全ての要素をドット単位で調整することが出来なければ
「Parallax Mapping」を使う意味はない、と思います。
はっきり言って現実的ではありません。
ドット単位移動を可能にするスクリプト素材はよく見かけますが
通行設定にまで言及しているのはほぼ皆無ですし。
逆に言えばプレイヤーが操作する余地のないイベントやOPEDの演出など
ここぞという場面で使えば強い印象を与えることが出来ますし
非常に効果的で価値のあるテクニックになると思います。
まあ一言でまとめてしまえば適材適所という話です。
おわり。