映画 「009 RE:CYBORG」 感想

というわけで遅ればせながら観てきました映画「009 RE:CYBORG」。

最初は妙にスタイリッシュになったジョーたちに「お前ら誰だよ」と突っ込んだものの
作品の雰囲気に合っていたこともあり違和感はすぐに消失。
3Dメガネで映画を観るのは実は初めてだったんだけど
導入部のビルが倒壊するシーンや宇宙空間での慣性による浮遊感、
水滴や煙など不定形のものがヌルヌル動くところはCG作画ならではで感動モノ。
これが現在の3Dアニメか……!

前に『ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破』で
一部のシーンやモブキャラにCG作画を導入しているのが話題になったけど
今回の『RE:CYBORG』は完全CGらしいからなあ。技術の進歩はすごいわ。

そしてストーリーは『地下帝国ヨミ編』『神々との闘い編』をベースに
先日発表された完結編小説『2012 009 conclusion GOD’S WAR』の
エッセンスを加えたような印象。
ジョーが高校生活3年を延々と繰り返している設定や<彼の声>に操作される人間たちなど
記憶の消去や改変、脳や感情といったものの危うさを主題としているところは
神山作品というより『イノセンス』などの押井作品寄りな雰囲気があるなあ。
前情報から記憶を失ったままの逃亡劇が結構長いのかと思っていたから
早々に記憶を取り戻したのがちょっと意外だったり。

また「27年ぶり」という台詞は原作で最後の連載となった『時空間漂流民編』が
1985~1986年発表であることに掛けてるのかな、など
細かいところでニヤリと出来るネタが入っているのも嬉しいところ。
『時空間漂流民編』のループ構造は本作とは矛盾するとか
『緊急シミュレーション1992』はどこにいったとか突っ込みどころはあるけど。

ただ分かりやすい黒幕がいないということで
クライマックスに向けての盛り上がりがあまり感じられなかったのが残念なところ。
ジョーとジェットの宇宙空間のシーン(どう見ても『地下帝国ヨミ編』)で
「あれもしかしてここラスト?」とようやく分かったくらいだし。
アクション的な盛り上がりや緊張感は中盤、
核ミサイルの爆発から加速装置で逃れるシーンがピークだったかもしれない。

そしてジョーが宇宙空間で叫んでからのエピローグは
完全に小説『2012 009 conclusion GOD’S WAR』のラストを思わせるビジュアル。
読んでいれば「ああここでこういう世界に転換するのね」と
それなりに納得出来るんだけど
初見だとかなり唐突に感じてしまうんじゃないだろうかこれ。

<神>が人間の脳味噌の中に原初的に存在するものならば
スタッフロールで月の裏側にアレがあった理由は……?
って感じのSF的な広がりを最後に提示していたし
本作『RE:CYBORG』は小野寺氏の小説に合わせて発表された
「別解釈の完結編」だったんだろうなあ、と。
「人間の悪の部分」を神の軍団という分かりやすい敵に顕在化させて
敢えてB級エンターテイメントに落とし込んだのが小野寺氏の完結編、
あくまでもリアルな世界観で「人間の悪意(あるいは自滅遺伝子的なもの)」を
広げていった場合何が起こるのかを描いたのが今回の『RE:CYBORG』って感じ。

しかし尺の関係もあるだろうけどやっぱり9人全員にスポットを当ててほしかったなあ。
PVの全員集合がまさか「※イメージ映像です」だったとは思わなかった。
特にピュンマは監督に怒っていいと思う。
深海活動用サイボーグとは一体なんだったのか……。
こんな扱いだから完結編小説で敵に回っちまうんだよ!

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ところでどうでもいいんだけど
「三次元」を「サンジゲン」と表記するのが生理的に好きじゃないわ自分。
「ブンガク」「セカイ」なんかと同ベクトルの胡散臭さががががが。

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009 RE:CYBORG

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