そんなこんなでついに始まった富野由悠季監督の最新作
『ガンダム Gのレコンギスタ』。
富野ファンというか信者なので
情報が一つ出るたびにまだかまだかと待ち望んでいただけに感無量。
あーリアルタイムで富野作品を観られる幸せ。ひゃっほい。
近未来の象徴として扱われることが多い軌道エレベータを
信仰の対象、過去の象徴としている点
(常に10年後、100年後を見据えている富野監督ならではの逆転の視点!)や
「旦那探しのため、入学時から積立をして軌道エレベータのチケットを買っている」
という絶妙にリアルな女性のしたたかさ強さなど
導入部の設定や展開だけを見てもまさに富野作品。いやあ堪らないわ。
そして個人的に監督のメッセージを一番強く感じたのが
主人公、ベルリ君のキャラクター。
ここ数年は「俺tueeeeeee/無双系」みたいな語で表されるように
何でも出来る万能・最強系の主人公が流行になっている感があり
ベルリ君も「飛び級の優等生」という点ではその範疇に入るんだけど真逆なのがその性格。
そういった最強系の主人公は
どちらかと言えば内向的、自己完結的で世の中を斜めに見ていて
大人を理解しようとせず、大人からも理解されない存在、という描かれ方が主流だけど
ベルリ君はクラスの最年少として先輩たちに可愛がられており
教官からも「生意気だけど憎めないヤツ」という評価をされているのが印象的。
このあたりはいまだに「エヴァンゲリオンの呪縛」から抜け出せていない
今のアニメ・漫画業界に蔓延る最強系主人公たちへのアンチテーゼであると同時に
ベルリ君こそが富野監督の理想とする若者像なんだろうなあ、と。
大人の世界だって捨てたもんじゃないぞ、真っ正面からぶつかって来いよ、みたいな。
また何と言っても忘れちゃいけないのが
富野イズム溢れるEDテーマ「Gの閃光」の歌詞。
これはもう完全に富野監督による応援歌だわ。
今の若者のケツを思いっきり引っぱたいて鼓舞している感じ。
前のTVシリーズ『オーバーマン キングゲイナー』では
「籠の中の鳥じゃなかったら飛んでいけ」というのをメインテーマとしていたけれど
今回の『Gのレコンギスタ』では
「とりあえず立ってみて歩き出せ! 動かないと始まらない!」ということで
更にテーマを一歩押し進めている印象。
というわけで紛れも無く『ガンダム Gのレコンギスタ』は
富野監督が未来を担う若者たち、子供たちに向けたアニメなんだよなあ、と。
ところで「ガンダムエース」では漫画版も同時に始まっているけれど
こちらは導入部にベルリの家庭環境が分かるようなシーンを加えたりと
アニメよりも分かりやすさを重視している感じ。
公式Twitterではわざわざ相関図やストーリーのあらすじを画像で紹介しているし
世界観の説明が少ないアニメ本編に対して
いろいろ敷居を低くして間口を広げようという意図があるのかな、と。
ただちょっとこのあたりは親切すぎるような気も。
とにかく状況が分からないままに振り回される置いてけぼり感も
富野アニメの魅力なだけに。
OVA『リーンの翼』の第1話とかもう最高。
あんなの見せられたら本気で食らい付いていくか苦笑するしかないわ。
……と、こんなことを書くと
「そういうので喜ぶような人たちに向けた作品ではありません」と
監督に一蹴されるんだろうなあ。
あ、御禿様(敬称)に怒られるっていうのは
富野信者にとっては勲章ですから。えへへ。