時間封鎖<スピン>から数十年─宇宙時間の数十億年─が過ぎた地球では、
火星からの来訪者であるワン・ンゴ・ウェンにより新たな局面が迎えられていた。
ジェイスンの計らいにより、ワンの専属医、そして親友となるタイラー。
ワンがもたらした技術を用い、〝仮定体〟との接触を図ろうとするジェイスン。
救いを求め新興宗教に走るが、それがただの幻想に過ぎないことを知るダイアン。
そんなタイラーたちを「スピンに呪縛された世代」と看破するジェイスンの父、E・D。
それぞれの思惑が渦巻く中、時間封鎖<スピン>は唐突に終わりを迎え、
地球は新時代に入ることとなる…。

先週感想を書いた上巻に続く「時間封鎖」の下巻。
上巻に続いて主人公タイラーの一人称で書かれていながら
時間封鎖<スピン>の時代を生きる者たちの群像劇としても楽しめる見事な構成力。
交互に描写されてきた過去と未来が一本の線になるクライマックスは
しんみりと、そして淡々としながらも新しい歴史が始まることを予感させる内容。
さすがにネタバレになるからこれ以上は言えないよ!
ブログの記事としては一週間空いちゃったけど実際は上下巻一気に読んでしまったから
これから上巻読む人は必ず下巻も手元に置いておこう。

というわけでタイラー、ジェイスン、ダイアンの三人の物語としてだけ見れば
本作は見事に完結しているわけだけど
SF小説として見るとまだまだ終わってない部分がまだまだあるんだよなあ。
政治闘争、宗教対立などの地球の混乱はまだまだ続きそうだし
何より時間封鎖<スピン>を起こした超存在〝仮定体〟の目的はいぜんとして謎のまま。
しかも後半では〝仮定体〟を生み出した更に上位の存在
(「幼年期の終り」におけるオーバーロードに対するオーバーマインドを彷彿させるような)
が宇宙の何処かにいるということまで仄めかしている。
本作は続編「無限記憶」そして完結編「Vortex」(邦題未定。2010年8月時点で未発表)
と続く全三部作の第一部だということが明言されているけれど
一体どこまで話が広がっていくのか楽しみで仕方ない。
続きを早く読みたいのは山々だけど尻すぼみになるほうがもっと嫌だから
ゆっくり待とうじっくり待とう。

ところで「時間封鎖」で検索すると
同名の18禁ゲームが同じくらいの割合で出てくるんだけど
確かあっちもSF要素を含んだオチだった気がするよ!

  

コメント (0) | トラックバック (0)

  SF小説

デントン教授が残した土壌サンプルを手がかりに、
一連の事件は解決へと向かい始めていた。
ヒューズの依頼を受け、犯人の拠点と目された炭坑跡に向かうジョーイとサイ。
〝犯人は果たしてウィルなのか?〟
訝り、そして悩むジョーイに対し、
サイはかつてウィルとフットボールのチームメイトだったこと、
そして自らの足の怪我について吐露する…。

前回の予想が少し当たったというか
各キャラのバックグラウンドに一気に踏み込んできた感があるHEROMAN第21話。
今回はサイの過去話だったけどこの辺りの流れいいなあ。
ちょっと間違えれば「サイの自業自得」あるいは「ウィルが全面的に悪い」
となりかねない所だけど、単純に善悪の構図にはならずに
結果としてサイとウィルの二人両方を持ち上げることに成功してる。
ここらへんの脚本地味だけどすごい巧いと思うわ。

逆に人間たちを誘拐した理由とか本当にスクラッグの残党なのかとか
海で戦った植物兵器との関連性はあるのかとか
大局的な部分は謎のままでぼかされちゃって肩すかしな部分も。
ウィルが乱入してきて三つ巴の戦いになるのを少し期待してたんだけど
さすがにこれ以上事態を混乱させたら収拾付かなくなっちゃうんだろうなあ。

一つ気になったのは
「サイとウィルがチームメイトだったのをジョーイが知らなかった」って所。
ジョーイ、ホリー、サイの三人は幼馴染みと言っていい関係のはずだし
回想シーンのサイたちはどう見ても中学校に入った後だから
知らないはずはないんだと思うんだけど。

何はともあれ次回はいよいよジョーイの過去話。
ジョーイが〝ヒーロー〟に固執する理由をはじめとして
今まで断片的にしか語られてこなかったことがどこまで明言されるのか、
各所で予想されてきたヒーローマン=父親説が果たしてどうなるのか。
それにしてもやっぱり母ちゃん美人だな! 子供二人いるとは思えないよ!
ちょっと調べてみたらアメリカ西海岸には結婚に年齢制限のない州が多いらしいから
20代前半とかでも全くおかしくないんだなあ、と。

Amazon.co.jpで購入する

HEROMAN Vol.1 (初回限定版) [Blu-ray]

HEROMAN Vol.1 (初回限定版) [Blu-ray]

Amazon.co.jpで購入する

HEROMAN 1 (ガンガンコミックス)

HEROMAN 1 (ガンガンコミックス)

Amazon.co.jpで購入する

ROBOT魂 [SIDE HERO] ヒーローマン

ROBOT魂 [SIDE HERO] ヒーローマン

コメント (1) | トラックバック (0)

  アニメ・漫画, HEROMAN

今回は気楽で身軽な1プレイヤーだ!
というわけでVIPRPG夏の陣2010作品を偉そうにレビューするよ!
当然ネタバレありだから嫌な人は注意してね!


No.01 終わらない夏2010
20100819-1.png
ツクラーを助ける〝妖精さん〟の役割を剥奪された主人公「まさお」が
人間界で一人のツクラーとなって奮闘する見るゲ。
…というごく普通の紹介文を書いてる自分に疑問を抱いてしまうくらいに混沌とした内容。
いい意味でとにかくひどい。
作中作「ブライヤーンクエスト」のタイトル画面は必見。
ちなみにボンボン派なので四駆郎は未読。


No.03 もしもの短編集
20100819-2.png
その名の通り数分で終わる短編の詰め合わせ。
単なる避けゲーかと思ったらアクションになったり
偽ムシャのミニゲームは死んだ場所で出てくるヒントが変わったりと
細かいところで力が入ってる印象。
ちょっとよそ見してたらエンディングが終わってて泣いた。


No.04 なんと今度こそ水煮が経済学講座しないksg(予定)
20100819-3.png
重要語句の解説から確認テストまである本格派経済学講座。
経済学と一口に言ってもいろいろあるけれど
日本を対象にしたマクロ経済学ということで不況問題などかなり現実に即した内容。
対話形式なこともあって非常に分かりやすい。
ことあるごとに「大学行け」って語が出てくるけど
経済学部でもない限り経済学史や経済思想史の方面に行っちゃって
マクロ経済はノータッチな気がするなあ。
確認テストなんて無かったんだよ…。


No.06 見るゲコレクション NO-RIMIX
20100819-4.png
まず起動時の演出で度肝を抜かれる。
内容はピクチャをふんだんに使った見るゲ…かと思ったらまさかの疑似3Dゲーム。
画面作りとしては「3Dエアホッケー」や「3Dブロック崩し」に近い感じ。
防御の判定はやや早めにされてるような印象を受けたけどどうだろう。
「締切」以降の敵がやってくる多段ヒットが怖い。ガリガリ削られる。
見る…ゲ? コレク…ション?


No.07 ここだけもしも世界闘技場
20100819-5.png
限られたポイントを行動内容や攻撃力に振り分け、闘技場を勝ち抜いていくゲーム。
こういう「編成だけして後は見守るだけ」っていうの急かされなくて好きなんだよなあ。
好きなだけに作品の肝である編成部分のインターフェースがやや扱いにくいのが気になる。
手間がかかるのは分かるけど「数値入力の処理」や「選択肢の表示」を使わずに
画面上でピクチャのカーソルを動かす形式のほうがよかったなあ。
シナリオやストーリー性は意図的に排除しているみたいだけど
「○○連勝すればランクAだ」みたいな感じで
とりあえずの目標くらいはあったほうがいいような気がするんだけどどうだろう。
一回戦でアーサーが混乱連打してきて封殺されたのは秘密だ。


コメント (0) | トラックバック (0)

  夏の陣2010レビュー, VIPRPG祭りレビュー, RPGツクール

ある夜を境に、空から星々が消えた。
惑星全体が界面に覆われ、界面内の時間の流れが1億分の1にまで遅くなる
時間封鎖<スピン>現象が、突如として地球を襲ったのだ。
その時間の暴走はまた、太陽が赤色巨星化して寿命を迎える数十億年後が
地球時間において数十年後に迫っていることをも意味していた。
突如突きつけられた滅亡に人々は嘆き、そして足掻こうとする。
タイラー、ジェイスン、ダイアンの三人の少年少女。
彼らもまた時間封鎖<スピン>によって運命を大きく変えられた「最後の世代」であった…。

背表紙の解説文いわく「ゼロ年代最高の本格SF」。
正直「ゼロ年代」という言葉とか区切り方とかがあんまり好きじゃないから
煽り文で少し敬遠してた部分もあったんだけど
敬遠してたのを少しばかり後悔。

地球全体が幕に覆われて時間の流れが変質する、
という設定だけを見るとかなり論理武装的な作品に思えてしまうんだけど
本作は科学的な理論や説明の描写がかなり平易に抑えられており、
SF小説というよりもタイラー、ジェイスン、ダイアンの三人を中心とした
青春小説の様相が非常に強い感じ。
更に過去と未来が交互に描写されるミステリ的な部分、
(構成としては「火の鳥」の復活編がかなり近いかも)
政府のエージェントらしき人物から逃げ回るというサスペンス的な部分、
そしてもちろんSF的な部分もしっかりとツボを押さえた形で入っている。
「西暦4*10^9年」って語だけでわくわくするわ。

いやあ本当に面白かった。
あらゆるジャンルの小説が融合したまさに総合エンターテイメント。
なんかベタ褒め過ぎる気もするけど個人的大ヒット。

著者のR・C・ウィルスン、訳者の茂木健はどうやら両氏とも熱心なジャズ・ファンらしく、
作中に登場する曲名については既に下巻の解説文で指摘されているけれど
確かに「出しゃばりの邪魔者」を「アメリカ南部版オノ・ヨーコ」と比喩するところ(133P)
なんかは古典SFでは当然出てこない、まさにゼロ年代ならではの表現だよなあ、
なんてことも思ったり。
うーん嫌いなのに使ってしまった「ゼロ年代」。
何はともあれ下巻に続く。

下巻の感想はこちら

  

コメント (0) | トラックバック (0)

  SF小説

第06話「おおかみさんと赤ずきんちゃん、ついでに亮士くん」

新たに鬼ヶ島高校生徒会長に就任した男、羊飼士狼。
彼との接触は、大神さんを始めとする御伽銀行のメンバーに影を落とし続けていた。
練習に身が入らず、ジムのトレーナーに叱咤される大神さん。
彼と大神さんとの関係を知りたがり、電話で林檎ちゃんを呼び出す亮士くん。
そんな亮士くんに対し「大切なことは直接訊くべきだ」と諭す林檎ちゃん。
三人は、それぞれの理由で過去に思いを馳せてゆく…。

ストーリー的にはほとんど進まずに回想メインの第6話。
回想中心だから目新しい部分はあんまり無かったんだけどいやあ面白かった。
もしかしたら今までで一番好きかもしれないわ今回。
というのも視聴者側が「今の三人の関係がどういうものなのか」
はっきりと分かってるから過去話だと観てて安心出来るんだよなあ。
熱にうなされながら弱みを見せてしまう大神さんとか
少しずつ心を開いていく大神さんとか
高校生に喧嘩を売って返り討ちに遭ってしまう大神さんとか
ベタベタだけど良かったわ本当に。
どんどんいい感じになっていく大神さんと林檎ちゃんの関係に
「あれ? もしかして亮士くん邪魔なんじゃね?」と思わず考えてしまったけど
そういう意味では正しくサブタイ通りの「ついでに亮士くん」なんだなあと。

そしてラスト、改めて大神さんに告白した亮士くんに
「やっぱりヘタレじゃないよなあ」と思いつつ次回に続く。
そういえば亮士くんは電話でも覚醒モードになるのね。
なんか受話器に向かってお辞儀してるイメージあったんだけど。

コメント (0) | トラックバック (0)

  アニメ・漫画, オオカミさんと七人の仲間たち