「石川賢画集 Collected Paintings KEN」 感想

漫画家、石川賢先生の急逝から十三回忌となる2018年に
画集「石川賢画集 Collected Paintings KEN」が発売。(2018年12月発売)
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というわけで1999年に刊行された3冊の画集
「闘神」「邪神」「魔神」以来の約20年ぶりとなる石川賢先生の画集ですが
本書の一番の魅力は何と言っても2018年の最新版ということで
過去の画集が出版されたあとのイラストが当然ながら載っていること。
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「ゲッターや虚無、魔獣戦線を石川作品の核と捉えて編集した」と前書きにあるように
『ゲッターロボアーク』の表紙や各OVA作品のジャケットイラストを中心に
数は少ないながらも『柳生十兵衛死す』『神州纐纈城』などのイラストも収録されており
どれもこれも迫力満点。
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また過去の画集の付録となっていたB2版ポスターのイラストが
3点全て載っていたのは嬉しいところ。
画集の付録ポスターはサイズの都合上八つ折りで本に挟まれていたので
折り目がついていない形でイラストを見ることが出来るのは
今回の画集が初めてなんじゃないでしょうか。
欲を言えば『神州纐纈城』の表紙は4巻ぶん全て収録してほしかったですね。
全編描き下ろしということもあってすごい格好いいんですよ。
2000年以降の作品では一番好きなのです。

というわけで「過去の画集に載っていない後年のイラストがある」というだけで
手放しで喜んでしまうところがあるんですが
過去の画集が全3冊でインタビュー記事や付録も充実していたこともあって
ページ数や収録数、読みごたえという点では
こちらの「石川賢画集 Collected Paintings KEN」はどうしても劣ってしまっている印象。
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また本書では真ゲッターロボ(『號』と『真』の両方に登場する機体)について
「真ゲッターのイラストは描かれた内容をおおよそ鑑みて二つのブロックに分けた」と
「イラストがどちらの作品のものかはこちらで勝手に判断したよ」
的なことが書かれており微妙に引っ掛かるものがあったんですが
この部分で「違う、そうじゃない」と思ってしまうことが多かったんですね。

例えば『ゲッターロボ號』のものとされている90ページのイラストは
『真ゲッターロボ 新たなる戦い』の1シーンですし
95ページのイラストは「スーパーロボット大戦FコミックPS版」の表紙としても使われた
『真ゲッターロボ ドラゴン争奪Act1』の1コマです。
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逆に『真ゲッターロボ』とされている103ページのイラストは『號』連載時のものですし
ファンなら一目で「これこっちの作品じゃないよ」と分かるような判別ミスが
多発しているんですね。
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OVAジャケットのほうでも133ページで
『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』のものが『新ゲッターロボ』と誤記されていますし
さすがに一文字號がデカデカと描かれているイラストを
『新』と言われてしまうとなあ……と思ってしまうのです。

そんなわけで先述した「内容を鑑みて~」の結果がこれだとすれば
正直な話「この本に携わった人たちは石川作品にあまり詳しくないし
詳しい協力者もいなかったんじゃないかなあ」と思ってしまうんですね。
いや別に編集者がマニアである必要はないと思うのですが
仕事として誰もが分かるようなミスは出さないでほしい、くらいの気持ちはあるのです。
特に90年代以降の作品についてはちょっと調べれば初出は分かると思いますし
前書きの「年代順ではなく年代的」の部分を読んでみても
「細かいことはよく分からないから……」みたいな
ちょっとした言い訳のような雰囲気を感じてしまうのです。

あとは自分が画集を買う目的の一つに「大きな絵を見てみたい」というのがあるので
スニーカー文庫の『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』や
電撃文庫の『ゲッターロボ』(たかしげ宙版)など
文庫本の小さなものしか見たことがない表紙イラストなどを収録してほしかったですね。
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ゲーム『ゲッターロボ大決戦』の攻略本などにも描き下ろしイラストがありますし
そのあたりの露出の少ない絵が載っていれば「おお」とも思うんですが
今のままだと「これでゲッターを軸とした画集と言われてもなあ」と感じてしまうのです。

そんなわけでこちらの「石川賢画集 Collected Paintings KEN」、
後年の画も収録された画集が2018年に出た、という点だけで嬉しいものではあるんですが
過去の画集と比べると廉価版・劣化版的なイメージが強く
ゲッターロボ中心と考えてもそちらも中途半端、
過去の画集との差別化のためにも後年のイラスト収録にもっと力を入れてほしかった、と
一冊の本として見てみるとなかなか厳しい評価になってしまう感じでしたね。

そもそも過去の画集が全3巻で刊行されているのに
新たなイラストも加えて1冊で出す、ということ自体に無理があったと思うんですよ。
なので個人的にはいっそのこと過去の画集3冊はそのまま復刊した上で
後年のイラストのみを収録した本を別巻の「増補版」として発売する、
みたいな感じのことをやって欲しかったなあ、と。
ファンなら中身が見合っていれば4冊でも喜んで買いますよ。はい。

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