漫画 「マジンガーZ対トランスフォーマー」 感想
世界的に有名な2つのロボット作品が夢のクロスオーバーを遂げた
漫画『マジンガーZ対トランスフォーマー』(2019年3月発売)。
トランスフォーマーは日米共同の作品で権利関係が複雑なのか
あまり日本のロボット作品とはコラボしている記憶がないんですが
(定期的に「スパロボ未参戦」って話題が出てくる印象があります)
そういった事情もあってか本作はアメコミでお馴染みのヴィレッジブックス社からの出版。
B5サイズで左開きのフルカラー、複数の執筆者によるリレー形式、と
本の装丁や内容も完全にアメコミを意識したものになっています。
値段はお高めですがこれもアメコミ基準で考えるとまあ普通ですね。
そして執筆陣はマジンガー側からは星和弥氏や衣谷遊氏、
トランスフォーマー側からは坂本ハヤト氏など
それぞれの作品のコミカライズ経験を持つ作家さんが集まり
がっぷり四つでぶつかり合う「対」に相応しいメンバーが勢揃い。
津島直人氏が漫画の執筆の他にもシノプシスを担当し作品を総括する形で関わっているのは
雑誌「スーパーロボットマガジン」での『マジンカイザー』『スターゲート戦役』など
両方の作品のコミカライズを手掛けたことがある実績を買われてのことでしょうか。
そんなわけでまさに夢の対決となった本作『マジンガーZ対トランスフォーマー』。
誤解があったり騙されたりで一度はぶつかり合った光子力研究所とサイバトロン戦士たちが
和解と交流を経て共同作戦をとるようになる……と
ストーリーは尺の都合もあってか東映まんがまつり的な非常にシンプルな展開。
その分しっかりと両作品がクロスオーバーしており
面倒見のいいボスが乱暴者のグリムロックを手懐けたり
戦闘描写でも「私にいい考えがある」とロケットパンチの推力を借りて
縦横無尽に飛び回るコンボイ司令官や
光子力バリアをパリーンと割るメガトロン様など
両作品の設定や魅力を活かした展開が目白押しなのが嬉しいところです。
また自分はマジンガー作品はいろいろ読んでいますがトランスフォーマーは門外漢なので
(ケーブルテレビなどで初代~2010の流れをちょっとかじった程度です)
トランスフォーマー側の作家さんの絵柄が新鮮で楽しめましたね。
特に吉岡英嗣氏の描いた四肢が太くて猫背気味のマジンガーZがすごい好みです。
氏の担当パートはマジンガーとサイバトロン戦士たちが誤解から交戦する部分ですが
そのシチュエーションに合わせて「サイバトロンたちにとって脅威となる存在」として
下から見上げるような視点で悪魔っぽくZを描いてくれた感じです。
甲児くんの顔までやたらと濃いのはご愛嬌。
ただ終盤の展開が「別世界の技術と融合したスタースクリームが暴れ回る」
「コンボイとメガトロンが一時休戦して共闘」
「戦いの混乱の中で再び次元移動が起こり新たな世界で新たな戦いへ……」と
津島直人氏の過去作『スターゲート戦役』と似通った展開だったのが気になったところ。
クロスオーバーもので短編となるとこういう終わらせ方になるのは分かるんですが
メガトロンの銃モードをコンボイが使うところまで同じですし
何だかスタースクリームを便利に使いすぎている感じもします。
スタースクリームが使いやすいキャラなのは分かるんですが
本作の場合ならDr.ヘル側からもラスボス的な存在を出して
マジンガーZ&コンボイとのタッグマッチ的な流れにしてほしかったなあ、と。
そんなわけで話の展開には「せめてもう一捻りあれば」と思ってしまうところなんですが
夢のコラボレーションにそんなことを言うのは野暮な気もしますし
今後もどんどん世界を広げていくであろう2つの作品が交錯したワクワク感は
何物にも代え難いものがあると思います。
ぶっちゃけてしまうと「マジンガーZ対トランスフォーマー」の字面だけで大勝利です。
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