永井豪 「幻選短編集 豪画沙」 下巻 感想

永井豪先生の画業50周年を記念して2017年に発売された短編集『豪画沙』。
上巻同様に下巻も作品ごとのちょっとした感想を書いてみたいと思います。

上巻の感想はこちら。
永井豪 「幻選短編集 豪画沙」 上巻 感想
https://tktkgetter.com/blog-entry-1435.html


○バイオレンスジャック~戦国魔人伝~
永井豪先生の最長作品である『バイオレンスジャック』の1エピソードでありながら
現在まで単行本化に恵まれなかった「戦国魔人伝」が待望の収録。
巨大なエネルギーの塊とも言えるジャックの身長は作中でもちょこちょこ変わっており
「ジャックの2m20cmという身長はありそうだけどあり得ないくらい、と
思っての設定だったが現実に2m超えのスポーツ選手等が登場してきたことで
ジャックも対抗するようにどんどん大きくなっていった」と豪先生は言っていましたが
それを反映してか21世紀に蘇った今回のジャックの身長はなんと2m80cm。
うーん、でかい。
そして『魔王降臨編』や『新バイオレンスジャック』など、完結後に描かれたジャックは
「ジャック=デビルマン」というその正体を前提とした演出や展開が多いのに対し
こちらの『戦国魔人伝』ではそのあたりへの言及は一切なし。
「ジャックは戦国時代をやりたかった」と言っていた内容そのままに
本作の舞台はまんま戦国時代だったり、
「ジャックは狂言回しであり、彼が動くことで周囲の人間が暴力の渦に巻き込まれていく」
という全体の流れなども含めてジャックの原点に回帰したストーリー、といった感じですね。
ラストは完全に尻切れなんですがこれはこれでジャックらしいのかもなあ、と。


○夢幻戦士
原因不明の奇病で眠り続ける恋人を助けるため
主人公が夢の世界で化け物と戦うアクション作品。
シチュエーションやストーリー自体はよくある話、と見せかけて
ラストに恋人が目覚めてハッピーエンド、とはならないビターさに
一筋縄ではいかない永井豪先生らしさを感じますね。
夢の中で変身した主人公のビジュアルが「いかにも古めかしい神話の英雄」で
そのあたりにチープさを感じてしまうのはご愛敬。
病院の壁から別の世界が、というのは『手天童子』をちょっと思い出しますね。


○カイケツ風呂頭巾
「顔を隠してれば恥ずかしくないもん!」をテーマに
カイケツ風呂頭巾が江戸の町で活躍する勧善懲悪痛快アクション。
乳とケツが連続で障子を破ったかと思うと
その次のページで「カイケツ風呂頭巾参上!」のテンポの良さが大好きです。
ラストの「もう一回やらせてくれたら~」などの文言など
作品全体に『けっこう仮面』の要素が散りばめられており
永井豪先生も続編というか自己パロディのように描いてみた、と言っていましたが
『けっこう仮面』自体がパロディ要素を多分に含んでいたことを考えると
パロディのパロディである意味三次創作、と呼べるのかもしれないなあ、と。


○ワンだ君
二本足で歩くことが出来る犬、ワンだ君(コロ)が
飼い主の気まぐれで学校に通うことになるドタバタギャグ作品。
冷奴先生がゲストキャラというよりも完全に主人公として活躍していたり
犬が完全に被害者じゃないか、という不条理さにモヤモヤしたりと
良くも悪くも2006年の作品とは思えないフリーダムさに
コミックボンボン末期の迷走っぷりが感じられて
ボンボン派としてはいろんな意味で涙が出る作品ではあります。


  

 

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