R・C・ウィルスン 「連環宇宙」 感想

R・C・ウィルスンの『時間封鎖』『無限記憶』に続く
3部作の完結編『連環宇宙』を読了。

今回は精神科医サンドラを主人公とする現代パートと
一万年後、仮定体との接触を望む人々が地球へ向かう未来パートが交互に語られる構成。
特に未来パートは前作同様にタークやアイザック少年が主人公となり
単体での作品というより『無限記憶』の完全な続編といった印象。
『無限記憶』と『連環宇宙』は一気に読んで正解だったなあ、と。

また『無限記憶』では単なる背景設定の1つでしかなかった
タークの過去の放火や父親フィンドリーの工場が本作の大きな鍵になっており
更に「放火に巻き込まれて死んでしまった警備員」という
完全にどうでもいい立ち位置だと思われた人物が未来を担う超重要キャラとなるなど
細かい設定まで余すことなく拾ったまさに完結編に相応しい内容。

そして何と言っても本作の肝はラスト数十ページの最終章。
意識の拡散により神の如き力を得たアイザック少年により語られる全ての謎、
スティーヴン・バクスターのジーリーシリーズ完結編
『虚空のリング』のクライマックスを思い起こさせる虚無的な宇宙の終焉。
しかもそこで終わらず
まさに「宇宙が連環」するエンディングになだれ込む展開と
圧倒的なスケールとビジュアルを提示しながらも
しっかりと二つの歴史が現代の地球で重なり合う流れは鳥肌モノ。いやあ大満足。

ただ『時間封鎖』からの謎だった仮定体の目的や正体は
暫定アーチ=単なるエラーチェッカーなど
やけに機械的、現実的、あるいは冷徹なもので無難にまとめられてしまった印象も。
(『無限記憶』での自意識うんぬんのゴタゴタは何だったんだ、と思ってしまうくらい)
自分としては『幼年期の終り』のオーバーマインドのように
オカルトの領域に突っ込んででも人知を越えたものを描いて欲しかったんだけど
そのあたりはもう個人の好みなんだろうなあ。

   

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