宇河弘樹 「おるたな 宇河弘樹短編集2」 感想

宇河弘樹氏の短編集第二弾となる『おるたな 宇河弘樹短編集2』が先日発売。
前回の短編集『妖の寄る家』はもう十年以上前になるけれど
しっかりと「第二弾」とナンバリングされているのがファンには嬉しいところ。
いやあ長かった。

そんな今回の短編集は『朝霧の巫女』の外伝である
『アサギリノミコ・おるたなしあたー』をメインに据えて全三作を収録。
各作品ごとの感想はこんな感じ。

○炎情の猫三味線
猫の世界を擬人化して組織から抜け出した女性を描いた作品。
抜け忍モノや必殺シリーズ、血で血を洗う姉妹ゲンカなどといった
数々の要素が入っており、独白などで「和」の雰囲気を全面的に押し出した
演出はまさに宇河作品といった印象。
とにかく主人公が美人で格好いいなあ。
本作をブラッシュアップした作品『ネコゴゼ(仮)』が
夏より連載開始とのことで、ページの関係で描かれなかったという
猫の世界やソ連の支配下になった日本など
「現実と少し異なる社会」がポイントになっていくのかな。

○THE CINDERELLA SHOES
欧州列強の植民地支配が宇宙へと向かい
アメリカ合衆国の代わりに火星が独立宣言をするような
ちょっと変わった19世紀イギリスを舞台とした話。
中心のテーマは性差に関わる苦悩や偏見などかなり重苦しいものなんだけど
主人公がどこまでも前向きで明るく従者を振り回す存在として描かれており
絶妙なバランスでエンターテイメントとしても成り立っている感じ。
火星=男神、金星=女神がレリーフとして演出されていたし
もし長編として連載されていたらお嬢様(?)が宇宙を股にかけるような
ドタバタスペースオペラになっていったのかな。
近代欧米とSFが融合したような世界、性差の持つ危うさを描くということで
『∀ガンダム』などをちょっと思い出したり。

○アサギリノミコ・おるたなしあたー
『朝霧の巫女』の単行本宣伝漫画として発表された全10話の短編連作。
「巫女」「審神者」「乱裁道宗」など各種のキーワードはそのままに
連載初期の「幼馴染み巫女ラブコメ」的な部分を広げていったら
こんな感じになったんじゃないだろうか、的な作品。
懐かしのビーボ君の再登場や
アニメ版での敵キャラだった「黄昏の巫女」の存在、
更にはドラマCD(コミックイメージアルバム)を思い起こさせるような
一話完結の学園モノストーリーなど
様々なネタを詰め込んだファンサービス満載の朝霧集大成といった印象。
でもこれ単行本の宣伝漫画じゃないよなあ……。

そんなわけでそれぞれ「Alternative=おるたな」な世界観を持つ
三作品で構成された本短編集。
各作品とも非常に魅力的だし『ネコゴゼ(仮)』の連載も楽しみだわ。

ただ一つ引っかかったのが短編集のネーミング。
読めば『おるたな』の意味もよく分かるんだけど
完全に初見だとタイトルから作品の雰囲気や内容が想像しづらくて
本屋で目についた時に手に取りにくい気もするなあ、と。
何だかんだで宇河氏の代表作は『朝霧の巫女』なんだし
『朝霧~』の外伝であることをもっとアピールしたタイトルにしても
良かったんじゃないかな。

   

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