永井豪 「改訂版デビルマン 第4巻」 感想

月一冊で刊行されてきた「改訂版デビルマン」の最終第4巻。
人間狩りの始まりから明の正体バレ、そして人類滅亡までの怒涛の展開は
傍目から見てもどこにも何も付け加えられないくらい完璧な構成で
今回の「改訂版」でもほぼそのまま。加筆修正もほとんど無し。
1ページずつ比較してみたんだけど変更点は2~3コマしか見つからなかった。
見落としはあると思うけどそれくらい少ない感じ。

 devi-01.jpg devi-02.jpg

4巻で加筆がはっきりと分かる数少ないコマ。
左が愛蔵(文庫)版、右が今回の改訂版。

そんなわけで最終巻は前の愛蔵版とほとんど同じなのかな……と
思いながら読み進めていったらまさかの本編クライマックス、アーマゲドン部分が
「ネオデビルマン」から20ページほど挿入+再構成されていてびっくり。

短編「ネオデビルマン」はそんなに嫌いじゃないんだけど
中心になっている描写とテーマは
・争いを好まない明(体育の授業のサッカーでさえも嫌悪する)の優しさに惹かれる了
にあるわけで、その部分をそぎ落としてまで
本編に挿入する必要はあったのかなあ、と思ったり。
無理矢理ページをバラバラにして入れてるから繋がりも悪いし
「アギラゆくぞ!」の台詞も単体だと意味が分からないし。
アーマゲドンの描写を追加するなら
完全描き下ろしでやってくれたほうが不自然な部分も減らせるし
そっちのほうが嬉しかったなあ、と。

そして後書きや解説文の類が無かったのには今回もがっかり。
結局後書きがあったのは1巻だけか…。
最終ページの紙の裏がそのまま奥付になってる時点で
もうギリギリなんだろうなあページ数。

そんなこんなで無事に完結した「改訂版デビルマン」。
中盤の構成が大幅に変わり随所に加筆修正+描き下ろしページが追加されるなど
数あるデビルマンの1バージョンとして考えれば十分楽しめたんだけど
カバー裏に書かれている「最高の完成度」「至高の姿」という紹介文は
さすがにちょっと言い過ぎじゃないかなあ、というのが正直なところ。

「改訂版」と銘打って加筆修正や追加ページを売りにしていた部分もあったんだし
どうせやるならもっと色々と大胆に暴れて欲しかったような気も。
それこそ「レディー」や「ジャック」からも引用してしまうとか。
「レディー」のアーマゲドン回想シーンなんか勢いのある画ですごい好きだったんだけど。

オリジナル版が好きな人に歩み寄っているわけでもないし
かといって「全部乗せ」「何でもアリ」「スーパーデビルマン大戦」
と言えるくらいはっちゃけてるわけでもないし
そこらへんがどうにも中途半端に終わってしまった印象があったり。
個人的にはもう苦笑するしかないくらいの大幅改変でも良かったんだけど。

そんなわけで心は既に「新装版マジンサーガ」へと移っていたりするのだった。


石川賢「ネオデビルマン」は巨大な竜デビルマン、
アギラの誕生を描いたエピソードであり
永井豪「ネオデビルマン」の「ゆくぞアギラ!」の台詞は
それを受けてのものとなっている。

   

Sponsored Link

コメント (5) | トラックバック (0)

  ダイナミック系