1月から上映中の映画『劇映画 孤独のグルメ』の公開に合わせて
『孤独のグルメ』のアンソロジー的なファンブック
「トリビュートブック 100%孤独のグルメ! それにしても腹が減った!」が発売。
というわけでこちらのトリビュートブックですが
あくまでもトリビュート「コミック」ではなく「ブック」ということで
いわゆる漫画のみの本ではなくエッセイやインタビューなども半分近くを占める内容。
また映画の公開に合わせて刊行されたにも関わらず
各エピソードや登場人物の紹介、登場する店の紹介などの巡礼ガイド的なページはほぼ皆無で
内容は既存のファン向けというかかなりマニア向けというか
「新規客向けのガイドブック」とは一線を画している感じですね。
そして執筆陣はラズウェル細木氏(『酒のほそ道』)や新久千映氏(『ワカコ酒』)など
食べ物漫画、呑み漫画を代表作に持つ漫画家さんを始めとして
この手のエッセイ漫画ではお馴染みの吉田戦車氏、カレー沢薫氏など
食べ物系の漫画やコンビニコミックに慣れ親しんでる人なら
皆が知っているであろう錚々たるメンバー。
逆に浦沢直樹氏などは長編ストーリー漫画のイメージが強く
この手のアンソロジーで名前を見ることはあまりないので驚きの人選ですね。
そんなわけでページの半分ほどが文章のエッセイやインタビュー、
残りの半分が二次創作的な漫画やエッセイ漫画となっている本書。
カレー沢薫氏のエッセイ漫画は毎度毎度「この人面倒臭いなあ」(褒め言葉)と
思ってしまうような絶妙な捻くれかたが魅力だと思うんですが
今回の『井之頭五郎を語る』もアームロック回をテーマに
数ページにわたってネチネチと考察する氏ならではの内容ですし
新久千映氏の『五郎とワカコ 赤羽の朝』は
原作の赤羽の飲み屋で登場した「水商売って感じじゃないOL」が実は……という
原作を別視点で見る二次創作でありながら夢小説的な性格を持つものにもなっており
まさに「俺は…夢でも見ているようだ……」を体現した
ちょっと不思議な気分になれる作品。
本書の巻頭にあるインタビューは
「『自分の土俵に持ち込める』のが『孤独のグルメ』のおもしろさ」と題されていますが
まさにそれぞれの作家さんが自分の得意分野で『孤独のグルメ』を描いている感じです。
そして個人的に本書の目玉だと思っている浦沢直樹氏の『孤独のランチ』は
「池ノ上六郎」を主人公とするちょっとしたパロディ的な作品。
食べ物の味や店の雰囲気、他の客などではなく「椀の配置」が話の中心になるというのは
意外にも原作にはなかった視点ではないでしょうか。
池ノ上六郎のキャラクターはどことなく
『MONSTER』のルンゲ警部に似ているような気もするなあ、と。
そんなわけで豪華メンバーによる夢の競演で食べ物漫画好きなら間違いなく楽しめる
「トリビュートブック 100%孤独のグルメ! それにしても腹が減った!」。
映画も上映開始から2ヶ月が経ちますが
まだまだ上映している館も多くロングランとなっていますし
『孤独のグルメ』がいろんな形で盛り上がっているのは嬉しいなあ、と。