映画『大長編 タローマン 万博大爆発』感想

なんだこれは!(気さくな挨拶)
というわけで2022年に謎のブームを巻き起こし
各種グッズやガイドブック、Blu-rayなどが次々と展開している
『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』(通称:タローマン)が
ついに総天然色の長編映画として劇場に進出。
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さすがにマニア向け寄りのためか全国上映とは言っても規模はかなり小さく
地元・仙台市唯一の上映館であるTOHOシネマズ仙台では
2週目にして早朝の1回のみの上映になってしまったんですが
どうにか観に行くことが出来ました。

旅行日記 大阪 3日目 ~万博記念公園・大阪大学など~ (2025年6月)
https://tktkgetter.com/blog-entry-1622.html

先日の大阪旅行で2025年万博はもちろん
吹田市の万博記念公園でEXPO’70パビリオンや太陽の塔の中も見学して
予備知識もしっかり得てからの鑑賞です。

そんなわけでこちらの『大長編 タローマン 万博大爆発』ですが
いやーすごい面白かったですね。
現実に2025年の万博が開催されている中で架空の昭和100年の万博を舞台とし
更にはサブタイトルが「万博大爆発」とこれだけを見れば完全に出オチの状態なんですが
それだけで終わらないシュールな画面作りの数々と
「でたらめと秩序の対立」をテーマとした根幹の大真面目さはさすがのタローマン。

導入部こそ「奇獣やタローマンがでたらめに暴れ回る」いつものタローマンなんですが
「同じことを繰り返すくらいなら死んでしまえ」とばかりに長編作品でしか成し得ない
しっかりと1本の筋の通ったストーリーを見せてくれた感じですね。

TVシリーズは尺の関係もあって
「タローマンがどんなでたらめをするか」が主軸となっており
地球防衛軍、CBGの面々は賑やかしのような存在になっていたんですが
本作は彼ら1人1人にしっかりとしたエピソードがあり
物語の中心となっているのは着目すべきところ。

未来から来たサイボーグ、エランとの交流もあって
準主役のような扱いとなっている風来坊はもちろんのこと
黒幕の正体や隊長からバッヂを託された珍助少年の未来での再登場などの
タイムトラベルものなら外せない王道の熱い展開を
しっかりとやってくれているのも嬉しいところです。

今回の映画は中盤はストーリー上の都合もあってタローマンはほとんど活躍せず
映画全体でも「タローマンをどう制御するか」という展開が終盤まで続くので
本作の主人公はCBGの面々でタローマンは狂言回し、な感じもしましたね。

そんなわけで終盤まではタローマンもモラル重視の存在となったりと
意外にも真面目な(?)物語が展開するんですが
それまでの鬱憤を吹き飛ばすかのような
後半のでたらめなカタルシスこそが本作の真骨頂。

中年隊員&新人隊員のおとぼけコンビが
TVシリーズに登場した奇獣たちを引き連れてくる集大成的なワクワク感、
そして満を持して復活したタローマンのでたらめはまさに爽快。
中でも黒枠をぶっ壊して劇場すらでたらめの中に取り込んでいく演出には
とてつもない開放感と同時に「ああこれ映画館で観て良かったわ」と
心の底から思いましたね。
停止光線を受けたのならCMになればいいじゃない、は
自分でも何を言っているのかわからないけどそう表現するしかないのです。

とは言えただ単にでたらめを賛美して
「でたらめ>>>秩序」な感じにはしていないところが本作の良かったところ。
作中で他者に迷惑をかけたヒャッハー集団やおとぼけコンビが
しっかりとその報いを受けており「でたらめと我儘は違う」
「好き勝手に振る舞って他者に迷惑をかけてはいけない」ことを
明確にする流れになっていますし
「秩序を持つ存在に憧れつつも楽しいでたらめを捨てられないエランの娘」と
「でたらめに憧れつつ頭の堅い自分自身を許せるようになったラストのCBG隊長」の二人が
この映画全体を通してみると理想の存在として描かれているような気がするのです。

ラストのナレーションにあるように
「でたらめと秩序が共存しせめぎ合っている」状態が人間の理想、とする結末は
TVシリーズよりも一歩進んだ感じになっていて個人的にはすごい納得です。
劇中で何度も繰り返された「帰ってくれタローマン」や「頑張るなタローマン」も
1つ間違えると単なる「ひねくれ者、逆張り、あまのじゃく」になってしまうので
でたらめって難しいなあ、と。

そんなこんなでレイヤーを無視してエンドクレジットでも本気で遊んでいる感じで
最後の最後まで本気のでたらめを楽しめた『大長編 タローマン 万博大爆発』ですが
自分が1つ後悔したのが赤青3Dメガネを持参しなかったこと。
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3Dメガネ自体はそれなりにきちんとしたものを所持しているので
観に行く前にもっと調べてから行くんだったなあ、と。
さすがにあのシーンだけのためにもう一度映画館に行く気はしないのです。

しかしアレですね。
黒幕がここまで極端な行動に走ってしまった理由である
「デタラメがいいなんて言えるのは、それで上手くいった人だけ」に対する
明確な返答というか反論というのは結局出来ないんですよね。

それは岡本太郎本人にも言えることですし
成功して映画にまでなった『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』そのものにも言えますし
それこそ世の中に存在する全てのコンテンツに言えることだと思います。

デタラメを貫こうが秩序を貫こうが上手く行かず
多くの人の目に触れることすらなく消えてしまうもののほうが多いのが現実なのです。
例えば何時間もかけてここまで長々と書いてきたこの感想記事も
当ブログの閲覧数から考えるとほんの数人くらいの人の目に触れただけで
埋もれてゆくと思われるのです。
ぬふぅ。

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