蒼樹うめ 「微熱空間 1巻」 感想
四コマ漫画『ひだまりスケッチ』や
アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のキャラクターデザインなどで活躍中の
蒼樹うめ先生の最新ストーリー漫画『微熱空間』の単行本第1巻が発売。
掲載誌が「恋愛系コミック誌」を謳う『楽園』ということもあって
「姉」「弟」のイメージと現実とのギャップから
状況に慣れるにつれて男女であることを自覚していく流れ、
無意識のうちに「可愛い」と思ってしまったことに対する戸惑いなど
少しずつお互いを意識していくようになる展開はまさに正統派ラブコメといった印象。
『ひだまりスケッチ』ではこのあたりの要素は半ば意図的に排除されていたから
(男子生徒はたくさんいるのにストーリーに関わってくることはないという状況)
何だかこういうのは新鮮な感じだね。
とは言え作品全体に漂うアットホームな雰囲気は
間違いなく蒼樹うめ先生の作品だ、と思わせてくれる温かい雰囲気。
「思春期における両親の再婚」というシチュエーションの作品は
どうしても家族関係でドロドロした感じになりがちだけど
本作は「二人とも素直に両親の再婚を祝っている」という状況に加えて
「お互いに聞かれたくないことは詮索しない」という気遣いが出来ており
新しい父や母との関係ももちろん良好、と
導入部の時点でしっかりと新しい家族として成り立っているのがいいところ。
安心して主人公二人の行く末を見守っていける温かさは
うめ先生の作品特有のものだなあ、と。
そんなわけで蒼樹うめ先生らしさの中に
ほんの少しの新鮮さを併せ持つ本作『微熱空間』だけど
本編と同じくらいすごいと思ってしまったのが単行本の装丁の豪華さ。
エンボス加工が施された高級感のある表紙
(『ドラゴンヘッド』の単行本で一躍有名になったアレ)に加えて
帯のざらざらした手触り、イラストたっぷりのカラーページの紙質の良さ、
更にカバー下のイラストまでカラー印刷だったり(こんな印刷出来るんだ……!)と
とにかく気合の入った単行本、という印象。
最近は値段の安さや手軽さもあって
電子書籍で本をよく読むようになりましたが
本作に限っては絶対に紙の本で買ったほうがいいですね。
久々に「紙の本ならでは!」と思わせてくれる感じです。はい。
ところで『てつなぎこおに。』の単行本はまだですかね……?(小声)
微熱空間 1 [ 蒼樹うめ ] |