長谷川裕一 「機動戦士クロスボーンガンダム DUST 1巻」 感想
衝撃のラストを迎えた「ゴースト」に続く形で始まったシリーズ最新作
『機動戦士クロスボーンガンダム DUST』の単行本第1巻が発売。
というわけで「ゴースト」のクライマックスで一気に時代が飛んで
宇宙世紀0169年という誰も知らない世界に到達してしまった
クロスボーンシリーズ最新作の舞台は
無数の小勢力がしのぎを削る「宇宙戦国時代」!
ビームサーベルに時間制限があるほどに技術が低下した世界で
「ミキシング・ビルド」によって生み出されたMSたちが大暴れする物語は
既存のガンダムのイメージからは良くも悪くも完全に解き放たれた感じ。
全身武器のギミックにフェイスオープンと
かつてのクロスボーンガンダムを踏襲した主人公機アンカーをはじめとして
四つ目のマラサイにガンダムに偽装したバイアランなど
「何でもありの混沌とした世界」を体現するような
トンデモデザインのモビルスーツが続々登場するワクワク感は
まさに長谷川漫画の真骨頂。
宇宙を飛ぶズゴックやゾックにしっかりと説得力を持たせているのは
一時期必要以上にネタにされた岡崎優氏の漫画版ガンダムに対する評価への
「設定に囚われて否定するだけじゃ面白くないよ」という
長谷川先生の遊びを含んだ一種の意趣返しなんじゃないかなあ、と。
そして物語の着地点が全くの不明瞭であることも
この混沌とした世界を強調している部分。
無印クロスボーンでは「木星帝国の地球侵攻を防ぐ」
ゴーストでは「エンジェル・コールを消滅させる」
というはっきりとした目的と敵対組織が序盤で提示されていたのに対して
本作のアッシュ&レオの目標は
「この世界を何とかしたい」という非常に曖昧なものなんですね。
またこれまでのシリーズではトビアに対するキンケドゥ、
フォントに対するカーティス、と
前作主人公が序盤から導き手として登場していたのに対し
アッシュ&レオはどちらかと言えば「二人三脚」な感じで
日々を生きていくので精一杯の手探り状態。
そういう部分も含めて良くも悪くも指針がないというか
どういう風にストーリーが転がっていくのかが全く分からないなあ、と。
そんなわけで既存のガンダム世界を飛び出してしまい
これまで以上に長谷川節が炸裂している新シリーズ『DUST』。
今のところ分かりやすい敵や黒幕も登場していないし
「戦国時代」の名に相応しいこの混迷した世界に
どういったケリをつけてくれるのかは全くの未知数ですが
まあガンダム漫画随一のストーリーテラーである長谷川先生のことなんで
そのあたりは全然心配してないです。はい。
それとオープニングで1コマだけ登場しているフォント&ベルは
『マップス ネクストシート』のゲン&リプミラみたいな
立ち位置になりそうな感じですね。
決して物語の主人公にはならない番外編的なアレというかなんというか。
パワーバランス的にもこの時代のファントムは最強レベルの機体だろうし
ストーリーの中盤で満を持して登場するんじゃないかなあ、と。
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