宇河弘樹 「朝霧の巫女 9巻」 感想

連載終了後に少しずつ単行本化が進んでいた「朝霧の巫女」が
1年ぶりの新刊となる9巻で大幅描き下ろしを加えついに完結。
一時はどうなることかと思ったけどいやあよかったよかった。
連載開始から数えるともう13年。
当時はアワーズ読むのがなんか恥ずかしかったのも今ではいい思い出。

そんなこんなでスサノオ陣営との世界を賭けた最終決戦となる第9巻、
ラストに相応しく倉子さん&花於ちゃんや忠尋&こまさん&結実さんなど
それぞれの関係にしっかりとケリが付いていき
特に執着からの決別(一種の親離れ子離れ的なもの)が描かれたこまさんに
最後にちゃんと救いがあったのは嬉しかったところ。
人間が制御していた大蛇がスサノオの毒(酒)によって制御不能になるという流れは
神話の逆解釈的な意味合いもあるのかなあ、と。
ただページ数の関係もあるんだろうけど
6巻ラストからずっと引っ張っていた柚子の復帰があっさりしていたのが少し残念だったり。
やっぱり最終的には「忠尋と柚子の物語」になっていくわけだし。

そして溶解した世界の修復が描かれる最終話「国産み」は
まさに宇河弘樹版「THE END OF EVANGELION」といった感じの雰囲気。
孤独と死が繰り返される「人間の世界」を肯定して選び取るという流れは
もう間違いなく「エヴァ劇場版」なんだけど
「エヴァ~」における神が非常に曖昧なものだったのに対して
本作「朝霧の巫女」では高天原(天照大神)が読者に分かる形で顕現し
最終的にブロッコリーアタック+陛下の鉄拳で
「神々に落とし前を付けさせる話」になっているのが大きな違い。
この辺りはキリスト教と日本神話の神解釈の違いがそのまま出てきているような気もする。

というわけで文字通りの大団円となった「朝霧の巫女」全9巻。
ありがとう朝霧の巫女! さようなら朝霧の巫女!
そういえばアニメ放送中に謎本みたいなのが出てた記憶があるけど
原作完結ということで解説+設定資料集なんかを出してほしいなあ、と。

   

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