R・C・ウィルスン 「無限記憶」 感想

R・C・ウィルスン『時間封鎖(上下巻)』に続く続編『無限記憶』をようやく読了。
以前に『時間封鎖』の感想をブログに書いたんだけど
あれから2年以上も過ぎてしまっていることに愕然としてしまったり。
ブログの文体も少し変わってる気がするなあ。

そんなわけでこの『無限記憶』、前作『時間封鎖』と比較すると
「パワーダウン」「中だるみ」という話を聞いていたので
戦々恐々としながら読み進めていったんだけどいやあこれが面白い。
っていうか諸所の評判を見ると『時間封鎖』だけが変に持ち上げられてる気もする。

中盤まではターク/リーサ/ブライアンの三角関係を軸にした昼ドラっぽい雰囲気で
主人公たちが研究や変革の中心にいた前作とは確かに異なるんだけど
<アーチ>による移動を当然のものと捉えている人々の描写など
「ああこれは本当に<次の世代の物語>なんだなあ」と思ったり。

特に「主人公たちより上の世代には<スピン>を経験したという自負があり、
無理由に下の世代に尊敬を強要している」という設定には
現代の「昔を美化する年功序列主義の老害」と「それに反発し毛嫌いする最近の若者」
(他にいい表現が思い浮かばなかった……。)
の確執にも通じるものがあるなあ、と思わず納得。

そして中盤にダイアンが行動を共にするようになってから話は一気に加速。
『2010年~』のボーマン船長を彷彿させるジェイスンの再登場や
仮定体ネットワークの中に存在するかもしれない意思、
終盤の混乱の中で「無限記憶」の中に呑み込まれていく登場人物たちなど
数々の謎と伏線を孕んでとにかく盛り上がる盛り上がる。
前作の主人公3人の末路がそれぞれ語られたことで
「彼らの物語は本当にこれで終わってしまったんだ」としんみりとなるね。

ただ後半は仮定体の謎に迫る展開上アイザック少年が話の中心になっていき
本作のサスペンス要素を担っていた遺伝情報局が
やけにあっさりとフェードアウトしてしまうなど引っかかる部分も。
特に語り手の役割もしているリーサやブライアンがパニック映画などによくいる
「ヒステリックで空気が読めず話を引っかき回すだけのキャラ」
でしかなかったのが個人的には気になったり。
リーサが逃亡中に携帯で連絡を取ろうとするシーンなんかはまさにそれ。
前作のダイアンがしっかりと「頭の良い女性」として描かれていただけに
このあたりはもうちょっとフォローが欲しかったなあ。

そんなわけで残りは最終作『連環宇宙』を残すのみとなったんだけど
本シリーズの構成って『幼年期の終り』と似てると思うんだよね。

1.宇宙からやって来たモノによる変化と混乱
(『幼年期の終り-第1部:地球と上帝たち』/『時間封鎖』)

2.変化した地球(+新しい世界)の描写
(『幼年期の終り-第2部:黄金時代』/『無限記憶』)

簡単にまとめてしまうとこんな感じになるし
今回登場したアイザック少年は描写なんかも含めて
『幼年期の終り』のジェフ(最初に新人類へと変化した少年)を思い起こさせるものだし。

だとすれば最終作『連環宇宙』ではアイザックみたいな子供がどんどん増えて
真の意味で地球人類が別のものに変わっていく話になるんだろうか。

   

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