マイケル・マーシャル・スミス 「みんな行ってしまう」 感想

「スペアーズ」で有名なマイケル・マーシャル・スミスの短編集。
…と紹介されていたけど「スペアーズ」は未読なのでさっぱり。
印象に残ったのは
・みんな行ってしまう
・地獄はみずから大きくなった
・ダイエット地獄
の三つ。

【みんな行ってしまう】
表題作。もう戻れない過去への郷愁がテーマの短編。
夕暮れ、セピア調の場面が容易にイメージ出来る展開は
良くも悪くも国語の教科書に載っていそうな話だなあ、と。
「SFホラー」という本の紹介や「少年はある日不思議な人物と出会う」という
作品紹介文から娯楽的な作品を想像してるとちょっと拍子抜けしてしまうかも。
こういう作品をSFホラーと銘打たれた短編集の一番最初に持ってくるのは
どうなんだろうと少し思ったり。

【地獄はみずから大きくなった】
とにかくタイトルが格好いい。
二人の男性と一人の女性のいわゆるドリカム状態による青春小説的な雰囲気や
現在と過去が交互に描写される構成などは
以前に読んだ「時間封鎖」を彷彿させる展開だなあと思ったり。
主人公たち三人の立ち位置や性格もよく似ているような気が。
科学とオカルトが当たり前のように同列に語られて融合する後半の流れは
瀬名秀明の「パラサイト・イヴ」や「BRAIN VALLEY」なんかを思い出すけど
本作は短編のテンポで人類滅亡まで行ってしまうぶんかなりぶっ飛んでいて
その違和感について来られなくなる人もいるんじゃないだろうか。
逆にそこが普通に受け入れられればハマるはず。

【ダイエット地獄】
太ってしまったけど絶対にダイエットだけはしたくない主人公が
「自分の肉体だけを過去に戻すタイムマシン」
を求めて奮闘するコメディ系の短編。
「ダイエットに比べればこんなの簡単」と数行でタイムマシンが完成したりする超展開、
そして毒があるとしか言いようのないラストは
まさにイギリス的なブラックジョークと言った感じ。
登場人物をバカにしているようなやや俯瞰的な視点は
同じくイギリスのSFコメディであるダグラス・アダムズの
「銀河ヒッチハイク・ガイド」シリーズを思い出すなあ。あれ大好き。

 

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