長谷川裕一 「機動戦士クロスボーンガンダム ゴースト 12巻」 感想

単行本にして全12巻と無印クロスボーンの倍のボリュームとなった
『機動戦士クロスボーンガンダム ゴースト』がついに完結。

というわけで堂々のクライマックスを迎えた最終12巻。
前回までにお互いに全ての手の内を出し尽くした、ということもあって
まさにラストバトルと呼ぶに相応しいガチンコ対決が展開。
ディビニダド(コーシャ)とカオスレル(トモエ)の
巨大MS同士ががっぷり四つに組み合っての格闘戦などは
まさに長谷川ガンダムならではのケレン味といった感じだね。

また個人的に印象に残ったのがカーティス(トビア)がフォントの能力を
「人類の進化の可能性かもしれない」と語っていたところ。
無印でニュータイプを「単に宇宙という環境に適応しただけ」と否定し
短編『猿の衛星』などでも「NT=人類の革新」に異を唱え続けてきたトビアが
ここで初めて人類の進化というものをフォントの中に見つけた……というのは
シリーズをずっと追ってきた読者にとっては感慨深いものがあるなあ、と。

そして強制冷却を駆使した戦闘、Iフィールドが最後の決め手となるなど
これこそまさに長谷川作品! と言わんばかりの決着のあとのエピローグとなる
最終話「その名はゴースト」はまさに単行本の帯にあるように「衝撃」の内容。
うわーここでこう来るか! いやーこのSF的展開はマジですごいです。

で、この衝撃のエピローグなんですけど、自分はこの終わり方に
「宇宙世紀年表という枷からの解放」的な印象を感じたんですね。

というのもこのエピローグの内容は
長谷川先生の代表作である『マップス』の
最終エピソード(時間軸的な意味での)となる短編
「五千万光年の風」にそっくりなんですよ。
スケールの大きさは違うものの
・冬眠していた主人公とヒロインが未来に目覚める
・世界が変わってしまっており、繋がりを失ってしまったと嘆く主人公
・全てを無くしたわけではない、と再び主人公が動き出しEND
というストーリーの流れやシチュエーションがそのまんま。

で、この類似はぶっちゃけ意図的なものだと思うんですね。
オリジナルの代表作である『マップス』を読者に想起させることで
ここから先の世界は手垢の付いた宇宙世紀ではなく自由な世界だ、と
暗喩的に宣言しているんじゃないかなあ、と。

ラストのナレーションが
「噂や伝説ではなく確かに存在した“もの”の話だ」
と語っているのがその証左。
「オフィシャルではございませぬぞ」を貫いてきた長谷川ガンダムが
ついに「手垢の付きまくった宇宙世紀」という枷を外して
「長谷川先生がオフィシャルな世界=確かに存在した真実の物語」
をここから始める意思表示だと思うんですよ。

というわけでここからは前人未踏で長谷川先生の独壇場。
「テクノロジーが退化しつつある宇宙世紀168年」という
誰も知らない世界を舞台に新たな物語が始まるんだなあ、と。

そんなこんなで次シリーズ『機動戦士クロスボーンガンダム Dust』の連載が
早くも決定しているみたいですが
「アンテナの生えてない謎の機体の予告シルエット」には
ガンダムというより「鋼鉄の狩人」や「ダイソード」に近い印象を受けるし
もはやガンダムを名乗る必要すらないくらいに
自由な長谷川漫画になっていくんじゃないかなあ、と勝手に想像+期待しています。
いやーもう超楽しみ。

  

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